2012年6月30日(土曜)は、ヒルトン・ニセコヴィレッジ(ニセコ町)で開かれた「森のカフェフェス」に行った。
野外コンサート主体の「夏フェス」なんですが、会場内に出店しているお店が、そのイベント名のとおり「カフェ」が多数。ドリップでコーヒーを淹れたり、エスプレッソマシーンでカフェラテを作ったり、ビールよりもコーヒーが飲まれるという、ハイネケンが当たり前のフジロック、サッポロ黒ラベルがおいしいライジングサンなどのロックフェスに慣れている身の上(私)には、非常に、非常に不思議なイベントだった。
出演アーティスト陣も、オーガニックと言えばいいのか。地下室+アルコールよりも、木漏れ日+コーヒーが合いそうなラインナップ。原田知世、アン・サリー、Chocolat & Akito、コトリンゴ・・・というメンバーで、正午から夕方まで、のんびり/まったりした音を聞かせてくれた。
原田知世はまぶしかった
会場は、右手に羊蹄山がドーンと広がる、ヒルトンのゴルフ練習コースと思われる草地。好天に恵まれ、午後2時ごろまで、座ってるだけで汗がじわーっと出てくる
感じ。でも、風が吹けばすごく涼しい。
そんな高原のステージで、原田知世はラストに「時をかける少女」を披露。ギターとボーカルのデュオ編成ながら、ちょっとサウダージな雰囲気のボサノバアレンジで聞かせてくれて、感激した。「過去も未来も 星座も越える・・・」。ユーミンが書いたこの詞自体が良いのに、アレンジが変わるともっと良くなるのか。文字通り、感涙もんだった。背筋をピンと伸ばして、座りながら歌う原田知世。すごく、すごくまぶしかった。
イッツ、キュート!Chocolat & Akito
続くChocolat & Akito。おそらく5月の帯広ライブで、ばんえい競馬を見て、さらに札幌で観光幌馬車の銀太君にも会えたことを、曲間のMCでうれしそうに話していたのがほほえましかった。しゃべるとドラえもんみたいなのに、歌うとぜんぜん別人。そんなChocolatのギャップと、夫のAkito(グレート3)の2人は、不思議なバランス感を保ちながら、ニセコの森で温かい音をつむいだ。打ち込み入りの曲で出だしをトチったり、パーカッションを叩くタイミングが、かなりぎりぎりに際どかったりするChocolat。彼女をサポートするような、Akitoの心の温かさも見えてくるような、キュートなステージだった。
うれし涙、わらい涙 コトリンゴは良いなぁ
そしてこのフェス最大の収穫がコトリンゴ。フリッパーズギターの「真夜中のマシンガン」、オリジナルの「みっつの涙」などなど、カバーもオリジナルも自在に歌い、時にジャズっぽいフレーズをちらつかせながら歌う雰囲気から「わ!矢野顕子みたい!」と直感。肩の力を抜き、無理に力まずに歌うような、かすれるような歌唱は、大貫妙子をほうふつとさせる。と書くと、ちょっと言いすぎかな。
芯に熱いものが宿ってそうなコトリンゴのピアノのテクニックと、独特の透き通るハスキーボイス。その性能にはうすうす感づいていたけれど、ドラム+ピアノという極小編成で、ほぼネイキッド状態であっても、わぁ。グッと聴かせてくれる。2011年のワールドハピネスで彼女のパフォーマンスを初めて見たときも「いいなぁ」と思ったけど、そのときよりも少しスリリングで、なのに解放的な雰囲気で、超ステキだった。
おいしいコーヒー、ベーグル
と、こんな具合に出演陣もナカナカだったが、フード/ドリンクの出店ブースのクオリティも高かった。地元ニセコのカフェ「高野珈琲店」のアイスカフェラテは、これまで飲んだどのカフェラテよりも美味。コーヒーのほどよい苦味と後味、そして存在感のある牛乳のコク。コーヒーと牛乳のシンプルなデュオが、良い味出してた。
「高野珈琲店」はベーグルも販売していて、ベーグルなんか絶対買って食べない!と食わず嫌いだった私の味覚を、大いに是正してくれるおいしさだった。硬すぎず、やわすぎず。ほどよい弾力の、ほどよい食感。
こんな具合に、コーヒーとベーグルが似合うフェスは、今回が道内初開催。お客はそんなにバカスカ入っている印象ではなかったですが、ちびっ子からおばあちゃんまで、親子3世代で楽しめる雰囲気の会場は、真剣に音楽を楽しむ/のんびりコーヒーを飲むといった具合に、来場客が自由にフェスを楽しめる感じだった。
そんな会場の空気と、羊蹄山の良い山を眺めていたら、あっという間に5時間のステージが終わっちゃった。
再びこんなステキなイベントが、北海道で開かれたらいいなぁと願っている。