おんがく、あれこれ

 2002年8月31日(土曜日)、渋谷アックスで日本のグループサウンズの至宝、ザ・ハプニングス・フォーの再結成ライブ「ハプニング・ア・ゴーゴー」が行われました。出演はザ・ハプニングスフォー、クレイジー・ケン・バンド、「平成サイケ歌謡の女王」渚ようこ、名古屋のザ・シロップ、ぽかすかじゃんの面々。そのときのレポートです。

 スタイリッシュな和グルーヴのザ・シロップ、演奏スキルが意外と高く笑わされた「ぽかすかじゃん」に続き、クレイジー・ケン・バンドがステージに立つ。1曲目は「グランツーリスモ」。イス席じゃなかったら絶対踊ってた(会場はイス席だったのだ!)。そして「しょわ、しょわ、しょわ、昭和~♪」な「昭和レジデンス」などを披露した後、横山剣氏が渚ようこを呼ぶ。

 渚ようこのボーカルに、CKBによる演奏で名曲「ニュートーキョー」を歌う。さらに横山剣・渚ようこによるデュエットで「新宿そだち」も歌い上げた。かっこよかった。再びCKB単体に戻り、「おんな、おんな、いいおんなー!」な「おんな」も熱唱。ラストは「あるレーサーの死」で締めくくったCKB。最後はテレビをくるくる回転させる台をメンバーがおもむろに取り出し、その上に横山剣氏が乗り、くるくる回転するという「噂の芸」も披露。その直後、CKBのメンバー全員はビートルズの武道館ライブのときの前座ドリフターズのように「逃げろ~」と退散。

 そして、いよいよザ・ハプニングス・フォーだ!「Ladys and Gentleman・・・」の甘やかなトメ北川のボーカルで始まる「ハプニングステーマ」でスタート。にくい演出。嬉しくなる一瞬。続いて高速ボサノバ歌謡の名曲「何故」。渋谷からほどちかい、代官山とか青山とか似合う傑作チューンだ。お次はハプニングス・フォーだからこそできたクラシカルポップ「あなたが欲しい」。「これぞハプ4!」という荘重な雰囲気の曲が、オリジナルメンバーで、しかもナマで聴けるなんて!瞳孔は開きっぱなしだった。

 さらに「エリナーリグビー」などアルバム「クラシカルエレガンス」収録曲も披露。すると渚ようこ、横山剣の両名が再登場。ハプニングス・フォーのメンバーとともに「アリゲーターブガルー」を歌った。確かこのとき、渚ようこは恐ろしくでかいダイヤモンドの指輪はめていた。狂っている!さらに「ゴーゴーガール軍団」も現われるなど、渋谷の最初の夜は大いに盛り上がった。

 ただ、東京でのハプ4“復活”ライブはこれだけでは終わらなかった。続いて、渋谷アックスの反対方向、青山「青い部屋」でアフターセッション(公開打ち上げパーティ)も敢行された。

マジカル・ハプニングス・パーティー!

 スタートは午後11時30分。GSや1960年代のポップスに造詣の深い町井ハジメさんがDJを担当し、カーナビーツのB面曲など、渋い楽曲で会場の雰囲気を作る。すると、トメ北川がカンツオーネ~イタリア、スパニッシュな雰囲気の弾き語りを、おもむろにはじめた。

 「なんて大人な雰囲気!」かっこいい。「2度目の夜」は、こんな具合にじわじわ始まった。

 数曲弾き語りをしたらハプニングス・フォーのメンバーを呼んで、「君の瞳を見つめて」「何故」「エリーナリグビー」などを演奏。中盤にジャムセッションのような形になり、ワインを飲んだり談笑したりといった具合に、リラックスした雰囲気。クニさんもかなりノりながらピアノを弾いている。途中、渚ようこが再々登場し「アリゲーターブガルー」をシャウトしまくりの荒削り歌唱で歌い上げた。クレイジーだ。渋谷の夜はどんどん狂い始めた。

 ジャムセッション状態が続いた。トメ北川は酒が入ったこともあるのか、歌声がアックスのときよりも滑らかになってて、ほんとうに若い頃と同じ様態と思しき歌声。あの不思議で独特な声は健在だった。ジャムセッション状態はまだまだ続いた。数回「あなたが欲しい」をやったり「君の瞳を見つめて」をやったり、「あなたの側で」もやったはずだ。明らかにアックスの時より調子が良さそうだったのがほほえましかった。

 そうしているうちに時間は深夜3時を過ぎていた。

 今度はサミー前田さんによるDJタイム。これがすさまじいというか、不思議な曲がばかりが飛び出すDJだった。GS~ニューロックが中心。中でも羅生門の「日本国憲法」、日本屈指の謎盤「薔薇門」を初めて知ったのは、この日、この場所でだった。するとクニさんがサミーさんのレコードに興味を示し、「いやあ、こんなレコード、よく持ってるねえ」。驚きと感心の入り混じった表情を浮かべていた。

 セッション終了後、思い切ってクニさんに声をかけた。これが、クニさんと生まれて初めて話す瞬間だった。「帯広から来たんです」と私が話すと、クニさんは「え?」と驚きの表情。「じゃあこんどは北海道できっと会えるね」。クニさんは笑顔で話してくれた。良い夜だった。