おんがく、あれこれ

 スカパーを録画するために、IO DATAのLANDISKを買った。

 スカパーチューナーとLANを介して音と映像を録画できるネットワーク対応の外付けハードディスク。要するにNAS。だからUSB接続の外付けHDDと比べて値は張るが、ヨドバシカメラのたまっているポイントを使って、ポチっと購入してしまった。容量は1テラ。

IO_DATA_LANDISK_1TB

 自宅に届いて箱を開けてみると、意外とずっしり重く、それなりの高級感があるのにほんの少し驚いた。

 http://www.iodata.jp/product/av/hdr/hvl1-g/index.htm

 IOの公式サイトによるとスカパーだけでなく、東芝のレグザの録画にも対応しているそう。そのせいか、ケースは黒を基調としたソリッドな質感でPCパーツというよりもデジタル家電という印象だ。でもどうせ部屋の隅っこに置かれるだけだから、デザインはどうでもいいんだけど。

 LANケーブルに接続し、ルーターを経由してLANDISKとスカパーチューナーの同期を図る。チューナーにもLANがついてるんだもん。すごい時代だよおっかさん、っておっかさんて誰やねん、みたいなひとり突っ込みをかましながら、スカパー側でLANDISKの設定。

 これが驚くほどカンタン。


 LANDISKの電源を入れてLANで接続したら、スカパーチューナーの設定画面から「機器登録」へ。

 LANDISKとスカパーチューナーの双方が正常にネットワークに接続されていれば、チューナー側がネットワーク上にあるLANDISKをちゃんと認識する。

 で、あとは番組表をチェックし、番組を録画するだけ。午前4時など絶対にグースカピーな時間帯に放送される番組も、眠らないHDDはしっかり録画してくれる。画質はなかなかと言ったところか。

 そもそも地上波では絶対に流さないようなプログラムを流してくれるために加入したスカパー。だからレアな番組を2万円ほどの投資で時間に縛られずに録画/チェックできるようになるLANDISKは、スカパーライフを強力にサポートする名脇役だと思う。

 ただし、問題点もないわけではない。

 (1)HDDが24時間稼動しっぱなし
 (2)同時録画ができない

 (1)はNASの性格上、しょーがないといえばしょーがない。ハードディスクは稼動すればするほど、データの書き換えが増えるほど故障する確率も高くなるわけ。だからしょーがない。

 (2)はできるかなと思ったが、やっぱりだめ。19時~20時の番組と、19時30分~21時の番組と言った具合に、録画時間が重複する場合はどちらか一方しか録画できない。

 さらに日本の映像メディアの最大の欠陥とも言えるテレビ→パソコンの親和性のなさにも、改めて気づかされた。日本の家電メーカーには、映像はテレビで見るという考え方が当たり前だと思っているのだろうか。しかしスカパーで録画した映像をPCを介してiPod touchで見る、なんてことを実行しようと思うと、さまざまなウラワザやエンコードが必要となる。らしい。

 著作権保護、不正コピー防止。目的はよくわかるが、もう少しPCとの親和性を高めて欲しいなと思う。

 それでも、現状ではスカパー生活が格段に楽しくなったのは間違いないが・・・。

 さて、LIVE FACTORYでも見るか。

 2009年のフジロック。北海道から寝台特急「北斗星」に揺られ、大宮で新幹線を乗り継いで初参戦した。テント、寝袋、コンロ、酒。10キロくらいのあれこれをザックに突っ込んで、苗場の山でテントを張った。

 雨に打たれ、風に吹かれ、宮沢賢治のような世界で繰り広げられた夏祭り。生まれて初めてナマで見るスティーブ・ヒレッジのGONG & SYSTEM7でのギターアクションに大感動し、フェラ・クティの実子(だったけ)のセウン・クティ率いるエジプト80の強靭なグルーヴ感のとりこになったり、ポリシックスを好きになりそうになったり(このときのステージはすごくよかった)、頭脳警察の”意外”なハマリ具合にうれしくなったり。

 そんな苗場の山の2日目、前日の雨が上がってドバーっと晴れ渡った。北海道に住んでいるとなかなか体験できない日本の夏って感じ。テントの外に出てiPodでガンガンに音楽を聴いて日記を書いてたら、広島からきたサンフレッチェ広島を応援している男性となんとなくハナシをした。

 サンフレッチェ氏は首からライジングサンのパスケースをぶら下げてた。紫色のサンフレッチェユニフォームも着ていた。

 「俺、北海道から来たんですよ」

 なんて話し始めると、パスケースをおもむろに取り出して、サンフレッチェ氏はニコリとして

 「これ、最初のライジングサンに行ったときのパスケースなんですよ」と話した。

 最初のライジングサンと言うことは、1999年。ちょうど10年前。その当時俺は高校生。今の音楽なんてツマンネー、なんてうそぶいて、ブルーノートとマイルス・デイヴィスを妄信するような、排他主義的アホリスナーだった。せいぜい、ゆらゆら帝国がかっこいいなーと思ってるくらいの、北海道田舎在住の盆暗野郎だった。

 「もう10年なんですか。なんか、ちょっと前みたいな気がしてたんですけど」

 そんな具合に苗場の山で10年前を振り返る。

 「あのときは、ナンバーガールとスーパーカーも出たんだっけな」

 サンフレッチェ氏がおもむろに話し始めた。

 俺より2歳年上の彼にとってナンバーガールは別格のバンドだったそう。その当時の俺は上のようなアホ音楽生活を送っていたために、ナンバーガールのスゴさに気づかない盆暗な高校3年生だった。そんなアホ高校生がアホ大学生になって社会人になりかけるとき、ナンバーガールの「SAPPUKEI」を聴きなおして「このバンド、スゲー!」と感動したのだった。

 でも、そのときはとっくにナンバーガールは解散し、向井秀徳はZAZEN BOYSでギターを弾いていた。

 あのときライジングサンに行ってたら、ギターウルフと一緒にナンバーガールも見れたんだ。逃したサカナはデカイ。そのデカさを、苗場の山で気づいた。

 そして2010年。

 今度はもうひとつ、逃したサカナのデカさを思い知らされた。それは青森出身のバンド、スーパーカー。「Futurama」を改めて聴いて、かつてのナンバガールと同様の後悔の念を抱いている。なんで、あの当時ナマのステージを見なかったんだ!なんであの時、このバンドの音をちゃんと聴いてなかったんだ!と。

 2010年1月、「Futurama」にずっぽしはまっている。

 ROVOを聴く耳にはあまりにもストライクゾーンなイイ曲「White Surf style 5.」でトランシーな世界が広がったかと思えば、日曜日の午前中の空気感を音像化したようなハッピーな曲が万華鏡をのぞくような感じで、あるいはやや荒削りなコーネリアスみたいな感じで、次々とスピーカーから飛び出してくる。

 エレクトロニカ化した雪国出身のナンバーガール。「Futurama」のスーパーカーを乱暴に表現してしまえば、そんな具合になろうか。北海道出身者の自分としては、雪と冬の感覚をロックのイディオムでうまく結晶化したバンドだなと、このアルバムからそんな感慨を抱く。

 でもスーパーカーはもういない。ILLじゃ、やっぱり違う。キラキラ感が違う。ナンバーガールとスーパーカーを聴いて、10代から20代を駆け抜けたかった。

 そんな後悔を抱くたびに、苗場の山で出会ったサンフレッチェ氏がうらやましく思えるんだ。

 なんかこう、シャカイジンとして生きているということは仕事=金、タイム=マネーなカラクリで生きているわけでして、逆に言えば仕事しなければ生きていけない/カネがない=レコードが買えないwithライブにも行けない・・・

 わけなんでありますな。

 そんな今日この頃、レコードを買う、あるいはライブに行くための資金を集める、ために俺は働いているわけで、気がつけばちっと更新できずに1月が過ぎようとしている。

 光陰矢のごとし。

 先人は、うまい形容詞を作ったもんだ。ビューチフォー。

 そんな今日この頃。でもCDはバシバシ買ってます。

 最近の高額商品ではヴェルベット・アンダーグラウンドの通称「黒バナナ」こと、1stアルバムのアセテート音源、2ndアルバムのMONO音源などが収録されている音源を買ってしまいました。MONOで聴く「SISTER RAY」はヤバイ。ルー・リードとジョン・ケイルの才覚が、掛け値なしの真っ向勝負を挑んだドキュメンタリー要素が、心なしか強化されている気がします。んが、正規音源のステレオ盤を再生すると「こっちもいいなー」。いったいどっちがいいんだ!わけがわらなくなるモノステの境界線。その辺縁を行ったりきたりするヴェルベッツ。かっこいいぜ。

 続いて布谷文夫の「ロストブルースデイズ」。なんとなく「2人のブルース」のいろんなオトを聴きたくなったので、布谷文夫~DEWの音源で格安で捕獲できるものをできるだけ買いあさっている1月です。それにしても「立ち眩みライブ」が高価で取引されているなんて、ちょっと信じられない。どうでもいいけど「2人のブルース」のベストアクトは、今のところ「幻野ライブ」だと思っております。

 その幻野ライブをひさびさに聴いて、郡山ワンステップフェスティバルのCDが気になり始めました。その昔、某雑誌でディスクリビューを書かせてもらっていたとき、ついつい買い逃してしまった昭和日本ロック史の準重要アイテム的ブツだと、数年目にして気づいたのだった。乗り遅れまくれの俺。既に購入不能状態ながら、奇跡的に某オークションで偶然見つけて即BUY。これで四人囃子や外道を、ちゃんと聴けるぞ。わーい。

 このほか、CDがあるはずなのに自宅でディスクが遭難している鉄腕アトムのトリビュート的アルバム「Electric-Brain Featuring Astroboy」も中古安価でゲット。ジャンルはいきなりテクノ~エレクトロニカ路線にシフトしますが、これに収録されてるROVOの「ASTROVO」が泣けます。

 原子力で動くマシーン=アトムというロボットに、喜怒哀楽の微妙な感性を与えるような、そんな感性を先天的に抱いているような。ツインドラムの駆動力とベースのクールなグルーヴ感(この曲で「ROVOのベースはかっこいい!」と気づきました)、そして勝井祐二の天衣無縫なエレキバイオリンの音色と残響。天馬博士の理学を超えたピースフル=原子力の純平和利用、みたいなストレンジでスウィートな優しさを感じさせる音塊が何年かぶりにスピーカーから飛び出して、俺のハートもピースフル。ところで気持ちを落ち着かせて音を聴いてみると、奇才・山本精一のギターがぜんぜん聴こえないのが気になった。

 手塚るみ子さんって、侮れない存在だと思います。父の手塚治虫の作品と、エレクトリックミュージックとを結びつけた稀有な存在。この「Electric-Brain Featuring Astroboy」だけでなく、スティーブ・ヒレッジ率いるSYSTEM 7で「PHONIEX」(あるいはHINOTORI)のコラボを実現させて、しかも去年のFUJI ROCK FESTIVALで「HINOTORI」をナマで聴けたんだもん。日本人でよかったーと思う今日この頃です。

 この駄文は会社の飲み会の帰りにドバーっと書きました。

リンク・レイ「アーリーレコーディングス」(Link Wray Early Recordings)

 2009年9月のシルバーウィーク。遠藤賢司のライブ2本と年に1度のロックンロールイベント「ロッケンローサミット」を見に東京へ遊びに行ったとき、新宿のディスクユニオンで「なんじゃこれ!」と釘付けになったのが、Link Wrayのこのアルバム。ペラペラな紙ジャケで、黄色いバックに赤い文字でLink Wrayとあるやたら目立つジャケット。Link御大はトレードマークとも言えるものすごいボディのギターを、真剣な表情でかまえている。ここで笑顔を見せていないのがイイ。すかさず帳場に持って行きました。

Link Wray / Early Recordings
1. Batman Theme
2. Ace Of Spades
3. Cross Ties
4. Jack The Ripper
5. Hidden Charms
6. I’m Branded
7. The Shadow Knows
8. Fat Back
9. Run Chicken Run
10. Black Widow
11. Scatter
12. Turnpike Usa
13. Mr Guitar
14. Rumble

 サーフ/ホッド・ロッド系の定型的ロックンロールとはベクトルを異にするような、独特のザラついたフレーズでロールしまくるLink Wrayのギターサウンドがテンコ盛りのアルバムは、まさに「Early(早すぎた)」ガレージロックの総本山みたいなものか。「そんな音楽ばっかり聴いてたら頭が悪くなるからやめなさい!」とお母さんに怒られながら、でも「俺もバンドやりたい!リンク・レイみたいな、かっこいいギターを弾きたい!」というアメリカの男子のハートをわしづかみにするキラーチューンは、ともすれば録音から60年近くたった21世紀の今だって、十分にキラー過ぎる。

 名曲「Batman Theme」はもとより、ダークなギターリフがたまらない「Ace Of Spades」「Jack The Ripper」「Fat Back」の3曲は、題名を見ないと同じ曲だと思っちゃうくらいの金太郎アメ状態。でもそれでいい!これがいい!。「Black Widow」ははYardbirdsがカバーしてそうな気がする。そして「Hidden Charms」はもう完全に、適正なガレージナンバー。「ガレージ」を巡る解釈はさまざまあれど、ノイジー、とっぽい感じ、ザラザラ、ギラギラ、ラフ、荒削り、かっこいリフ、という要素をガレージとするならば、その条件を全部満たしている怪曲。安直なリズムに、かっこいギターがギャンギャン鳴りまくるんだぜ。

 そしてシメの「Rumble」。もしこの曲をLink Wrayが作っていなかったら、ギターウルフのライブのエンディングはどうなっていたのだろうか、そしてギラギラ系のロックンロールの歴史は、今よりもうちょっとおとなしくなっていたのではないか、なんて妄想がどんどんわいてくる。

 とにかくかっこいいLink Wray。やっぱり1950年代~60年代のアメリカのロックンロールは、永遠にかっこいいと思いたくなる。そんな空気感が、ギュッと真空パックされている1枚。1家に1枚、Link Wray!

 ジョギングの魅力にずっぽしはまったドサンコにとって、何がつらいって冬こそつらいものはない。春夏秋と気楽に走ることができた歩道は雪と氷に閉ざされ、ジョギングをしようものなら怪我するか、ヘタしたら遭難するかもしれない。北海道の冬は冷たいが、走ることを望む人間にとってもまた冷たいのだ。

 そこで思いついた。愛用のジョギングシューズと電子記録係のiPodとNike+をリュックに詰めて、アスファルトが雪と氷に覆われていない街に行けばいいわけだ!こうして年末年始、無理に休みをとってなかなか足を運べない関西旅行もついでにかねて、2009年12月27日、札幌から大阪へと向かう寝台特急「トワイライトエクスプレス」に飛び乗り、翌28日から31日まで、大阪、奈良、兵庫、京都の4都市で約100キロほど走った。その記録と様子を、Google mapを使って紹介していきます。

 「これから関西を走ってみたい」というジョガーの参考になれば、また、地図も持たずに太陽の位置と道路の雰囲気だけでゴールを目指した阿呆ジョギング記を、笑いながら読んでいただければ幸いです。

 東海林さだおのエッセイやものの本によく出てくる「日本一低い山」といわれる天保山。標高4.53メートルという「山」は、大阪から1500キロほど離れた北海道に住む自分にとって、一度は行ってみたい存在であり、また登山を愛するものとしては、一度は登ってみたい山でもある。

 2009年12月28日、寝台列車を降りて天満橋のホテルをチェックインした直後、大阪市営地下鉄中央線に乗って、天保山を目指した。あこがれの山は地下鉄の大阪港駅から徒歩15分ほどの場所にあったが、やっぱりあっけない。大阪らしいショーもなさに感激しつつ、でもショーもなさに腹が立ちつつ、「これでいいのか」と、煮え切らないバカボンのパパのような気持ちを振り払いつつ、シューズのヒモをぎゅっと結び、iPod Nanoとシューズに内蔵しているセンサーを同期させる。生まれて始めての大阪ダッシュのスタート。目指すは、大阪城!

「日本一低い山」天保山から大阪城まで、ひたすら東へ走り続けるのだ!

 天気は快晴だが、海がすぐそばにあるためか風がやや強い。それよりも驚いたのは、潮の香りしてくるかなと期待していたのに、嗅覚がとらえるにおいは、工業的な、産業的な、人工的なにおいばかり。ゴムを燃やすような、排気ガスを束ねたような、鼻とのどの付け根がごわごわするような、軽度なポリューション。空気は決してよくないが、それでも見えるものがどれもこれも都会的で、走っていてたのしい。

↑天保山から東へ向かうと、頭上に阪神高速の天保山ジャンクションが広がる。グーグルの衛星マップで見ると、見事なつくりのジャンクションを楽しめます。ジャンクショニスト(ジャンクション愛好家)にはたまらない画像です。

↑天保山や地下鉄の大阪港駅からチラチラ見えた阪神高速湾岸線のでっかい橋。ちょっとヨーロピアンなつくりがステキです。ハイカラです。空気は悪いけど。

 そんなイかしたジャンクションをかすめ、東へ走り続ける。北海道の歩道はすっかり圧雪アイスバーンに覆われているのに、大阪のそれはしっかり露出している。シューズはしっかりグリップし、滑る心配もない。1カ月ぶりに走るアスファルトの感触を足の裏で楽しみながら、歩道、自転車専用道路、車道、高速道路、地下鉄の順に計画的に配置されている「中央大通」を、5分10~30秒台/キロを維持しながら東進。道産子者の田舎者だから、初めて走る大阪がうれしくてしょうがない。知らず知らずのうちに、ペースが上がってしまう。

 15分ほどで、JR大阪環状線の高架になっている線路が見えてくると、たくさん車線のある道路とぶつかった。するとなんと、横断歩道がない!カルチャーショックを受ける。札幌の道路ならば、横断歩道がない場所でも場合によっては突っ切ることができなくもないが、さすが日本第二の都市は違うね。ひっきりなしに車が現れるではないか。絶えることのない車の往来。無理やり道路を突っ切って、ここで事故死するわけにはいかない。どうしようかと悩みながら進路を変えると、歩道橋があった。車優先で人はその次。徐々に大阪の「走りにくさ」が本領を発揮し始めたかに見えたが、JR弁天橋駅を過ぎると、再び自転車専用道路と歩道という二本立てで、安心して走ることができた。それにしても、大阪のチャリンコユーザーたちは専用道路があるのに、5分の3の確率で歩道でペダルをこいでいる。これにはちょっと参ったけれど・・・。

 チャリンコ族が前から後ろから、ビュンビュンやってくる大阪の街を走っているとだんだん汗でドロドロになっていく。西日が背中にあたって、ちょっと暑い。大阪東進ダッシュのウェアは、ナイロンパンツと速乾性の化繊のシャツ。ただ、風が吹くとちょっと肌寒い。そして広い道を走るのも飽きてきたので、あてずっぽうに細い道に入ってみた。

 6車線の道路から、1本入ったとたんに車が1台通れるかどうかという細い道に出くわす。「これだよ。これ!」。道路が作られるよりも前に人が住んでいたような、そんな商都の歴史を感じさせる道を走る。と書けば聞こえはいいが、ここは商都・大阪。人と違ってナンボ、できるだけ突飛なことをして関東者をあっと言わせようという意識が24時間365日作動している街。突然、「毎年恒例のSMやります」みたいな張り紙がしてある、特殊な建物が視界に飛び込んできたのだ。

 その名は「九条OS」。突然エスエムの二文字が目に飛び込んできたから、なんだこれは!と、一気に脳裏に焼きついた。その筋らしい人が建物から出てくるのと同時に、俺はアヤシゲな雰囲気が漂う一角を後にした。あとでネットで調べてみると、Wikipediaに以下のように記載されていた。

 九条OS劇場は、毎年盆と暮れにSM大会を開催するため、関西の変態小屋といわれている。因みに九条OSのOSは大阪ストリップの略字の「O・S」であり、阪急阪神東宝グループのOSとはまったくの無関係である。飛田にある大衆演劇の「オーエス劇場」とも無関係である。劇場では他のストリップには見られないユニークな企画を実施している。美人のダンサーも多い。

 特別公演はSM興行が多い。宣伝は過激だがこれは集客上の必要と思われる。当局が目くじらを立てるほどの内容ではない。客層は健全であり従業員も礼儀正しい。ヤクザ者は客にも社員にもいない。SM期間の興行内容はSM白黒、SMレズ、M男調教等である。ちなみに、白黒とは男と女という意味であり、蝋燭を垂らし鞭でしばきいじめるショーである。SMレズは女同士でSMショーをする事。、M男調教は調教を受けたい観客が参加し舞台上でムチ叩きや蝋燭たらしでさらし者にされていじめられる事。ただし、M男調教に参加しても出演料は一切出る事はない。

 この劇場の歴史は古く、有名な伝説の踊り子、一条さゆり嬢もこの舞台に立ったダンサーである。(彼女は引退して十数年後、元ファンに火をつけられ、全身に45%の大火傷を負わされた。その10年後、釜ヶ崎で壮絶な一生を閉じる)

 2006年頃から基本的にストリップは行わず、ワンドリンク制のショーパブ形式で営業を続けている。

wikipedia=「九条OS」から引用
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%9D%E6%9D%A1OS

 「関西の変態小屋」だなんて、なんだかすごいなあ。せっかくだから寄っていけばよかった。しかもSM大会!が「盆と暮れに」しかやらないんだもん。惜しい!いや、でも痛いことはいやだな。妙な気持ちを振り払うべく、再び中央大通に出ると、やっと阿波座(あわざ)についた。地下鉄大阪港駅から4駅目。距離にして約5キロほどの場所。途中、信号待ちや歩道橋越えで時間を食ってしまい、ここまで約30分かかった。そしてこの辺から建物の密集度が高くなり、細い通りでも車の往来が多くなる。だんだん織田作之助や町田康の作品で現れる本の中の「商都」が、具体的に像を結び始めた。

 あてずっぽうに北へ向かうと、「靱公園」に出くわした。なんて読むんだろう。弥勒菩薩の「勒」と似ているけれど、違う。「うつぼこうえん」と読むらしい。ウツボって、海の生き物じゃなかったっけ。わけがわからなくなる。海のもんが、なんで陸にあるんだ。しかも海のものだったら、漢字のつくりに「さんずい」や「さかな」がつくはずなのに、この公園ときたら「靱」でうつぼだなんて。さっぱりわかんねー。

 さっぱりわかんないのは地理感覚も同じ。東に向かっているはずなのに、だんだん道路が細くなっていくような気がする。大阪城は、まだかー。泣きそうな気持ちになりながら、スーハー、スーハー、酸素と二酸化炭素を交換しながら走り続ける。スーツ姿に携帯電話を耳に当てて大阪弁をたくみにあやつるビジネスマン、ビジネスおねいさんも多くなってきたなーと思ったら、道頓堀でおなじみの「カゼの改源」の本社ビルらしき建物が見えてきた。

 ここらへんは江戸の昔のころ、薬問屋が多かったのかしら。遠く昔の歴史を想像しながら走っていくと、やっと天満橋に出た。きっと右手には・・・あった!見えた!大阪城だぁ!

 天保山から1時間ほど。大阪城の西隣にある大阪府庁(橋下徹のいるところ)をかすめて、最後に反時計周りで大阪城を1周。最初のカーブを曲がると、JR森ノ宮駅へと続くなだらかな下り坂。坂を快適に下ると、大阪環状線のオレンジ色の電車が見えた。再びカーブしてこんどは北をめざす。左手に大阪城、右手にJRの線路。ジョガーも何人かいる。JRの大阪城公園駅を過ぎた橋を渡り左に曲がって、もう一度橋を渡って、追手門小学校を過ぎてゴール。1時間30分で16キロを走ったのでありました。

 このあと、心斎橋のレコード店を冷やかして、道頓堀でたこ焼きをつっついてから時計回りで大阪城内を1周し、翌朝は反時計回りで1周。大阪城周辺はなかなかに走りやすかった。

 昨年末、関西を旅したとき、大阪は心斎橋のタイムボムに初めて寄ってみた。うわさの通り、1960年代のいかしたブツがたくさんあった。キンクス、60ズUSガレージ、ニートなビーツがぎょうさん。てんこもり。そんな店で最も気になったのは、ヴェルベット・アンダーグラウンドの7インチボックスセット。

 「いつのまにこんなハコが出てたんですか」。2009年はビートルズ箱、クラフトワーク箱、さらにワイルドワンズ箱を格安でゲットするなど、ハコの物欲はすさまじい。まさにハードコア。いや、そんなマイナス273度な絶対零度のギャグはともかく、ヴェルベッツのハコを心斎橋で見かけたとき、俺の心はガクガクと揺れた。だって、死ぬほど好きな「White Light,White Heat」の7インチ盤が、2枚も収められているんだぜ。

VELVET UNDERGROUND Singles 1966-69

THE VLVET UNDERGROUND SINGLES 1966-69 (sundazed 2009)

Single One – ALL TOMORROW’S PARTIES / I’LL BE YOUR MIRROR(Verve VK-10427)
Single Two – SUNDAY MORNING / FEMME FATALE (Verve VK-10466)
Single Three – WHITE LIGHT,WHITE HEAT / HERE SHE COMES NOW (Verve VK-10560)
Single Four – WHITE LIGHT,WHITE HEAT / I HEARD CALL MY NAME (Cancelled Single)
Single Five – TEMPTATION INSIDE YOUR HEART / STEPHANIE SAYS (Cancelled Single)
Single Six – WHAT GOES ON / JESUS (MGM K-14057)
Single Seven – VU RADIO SPOT (MGM VU-1)

VELVET UNDERGROUND Singles 1966-69

 と書いてみても、CDの音源でしか慣れ親しんでない聴覚には、どんな音が収められているのかさっぱり想像がつかない。でも、死ぬほど好きな(ってしつこいな!)「White Light,White Heat」が、7インチで聴けるのだ。うぅぅ~~~ん。ほわいらい♪というわけで、迷わずレジに向かった。ちなみにタイムボムのお値段は4980円。かんたんな日本語解説(A4用紙1枚)もついてきた。

 7インチハコを慎重に北海道へ輸送し、帰宅して針を落としてみた。もちろん、最初に聴いたのは「White Light,White Heat」。1曲のために記録メディア(円盤)のすべてを使う7インチ盤は、音楽にとって最も幸せなフォーマットだなと思う。そんなぜいたくが、ヴェルベッツで味わえるのだ!これを幸せと言わずに、なんと言おうか!

 ・・・という前置きはともかく、Single Threeの「WHITE LIGHT,WHITE HEAT / HERE SHE COMES NOW」。これがMONOの音なんです。いままでステレオ音源アルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」ばっかり聴いていた耳には、より音が悪くなり、音のくぐもり方が強くなったこの7インチ盤のほうが「ヴェルベッツらしいかも」と感じている。B面の「HERE SHE COMES NOW」もCDのほうが明らかに音質はくっきりしているけれど、やっぱりヴェルベッツらしいな~と、同様の感覚を抱く。

 そしていちばん気になっていたSingle Four。「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」こそSingle Threeと同じだけど、B面の「I HEARD CALL MY NAME」がやばすぎ。アルバムではまぶたの裏にギラギラ光る非日常のLSD体験(俺はやったとこないけれど)を音像化したような「SISTER RAY」のオーバチュアとも言えるこの曲は、モータッカーがドコドコとドラム叩きまくる快適なグルーヴ感に、フィードバックノイズが銀河のように渦巻き、銀色と黒色の2色だけで発狂するロックンロール。その銀河系ロックンロールが、7インチの溝にがっしりと、しかもMONO音源で掘り込まれているのだ。この曲だけでも、ボックスを買う価値はあると思う。

 ニコのボーカル&ウォホールとジョン・ケイル脱退後のヴェルベッツには食指があまり動かない自分にとって、すなわちアルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」が死ぬほど好きな自分だからこそ、この3枚目と4枚目のシングルは重要なアイテムになりつつある。やっぱりルー・リードがベロベロに歌いまくって、ジョン・ケイルがギラギラ、ザラザラしたフレーズを多用するノイズ/サイケロックンロールバンドとしてのヴェルベッツは最高だ。

 このボックスセットのおかげで、今度はMONO盤のアルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」を探してしまいそう。

 2009年8月、ライジングサン@石狩湾新港のアーステントで6年ぶりにギターウルフのライブを見て以来、彼らがつむぎだす爆音ミラクルロックンロールに再び痺れた。スピーカーから電気、いや雷みたいな爆音ノイズが、ピーピーガーガー鳴り響くアーステント。それからというもの、完全に狼ロックのとりことなった俺は9月のロッケンローサミット@渋谷、そして12月6日のベッシーホール@札幌と、ギターウルフを追い続けている。

 こうして地上最強のロックンロールアイドルとしてのギターウルフを”再発見”した2009年を締めくくるかのように、ギターウルフは5曲入り15分のミニアルバム「ジェット サティスファクション」をリリース。仕事と私用でドタバタしてた年末をやりすごし、2010年1月3日、俺は札幌のタワーレコード・ピヴォ店で、特典シールのおまけ付きを買った。2010年、最初の1枚。2009年のライブを収めたダイジェストDVD付き。

 というわけで、股関節の手術をひかえているセイジのギターノイズと高校生アクションなシャウトが真空パックされたミニアルバムの中身を、事細かに書いていくぜ!

ギターウルフ ジェットサティスファクション

ジェットサティスファクション(初回生産限定盤)(DVD付)

ギターウルフ「ジェット サティスファクション」
01.ジェット サティスファクション
02.ビルディング Z
03.エジプトロック
04.ワイルドレストラン
05.デビルクチビル

<特典DVD>
・環七フィーバー
・オールナイトでぶっ飛ばせ
・ジェット13
・インベーダーエース
・ワイルド・ゼロ
・ロックンロールエチケット
(Live@新代田FEVER=2009.03.03)

・星空ジェット
・ジェットジェネレーション
・オールナイトでぶっ飛ばせ
・ケンカロック
(Live@Rising Sun Rock Festival 2009 in EZO=2009.08.14)

 まずは1曲目、「ジェットサティスファクション」。バイク、皮ジャン、ロッケンロー!ウルフロックの必須アイテムをそろえて、お前がいれば最高!ファイアー!単語だけを並べると、あんまりピンとこないけれど、セイジの電撃ギターが鳴り捲れば、とたんにロックンロールする。スゲー。この感じは、電気ビートに載せてクールなグルーヴを生み出すクラフトワークとおんなじくらい、シュールでかっこいいぞ。

 続いて「ビルディング Z」。朝日を浴びて、次から次へとビルディングが空を飛ぶ!意味わかんない歌詞!しかもなんでZ!意味を求めることに意味がないのかどうか、足りない脳みそで考えてたら、今度はエジプト!ファラオあり、ピラミッドあり、スフィンクスあり。クレオパトラもあるでよ。もしかすると、ギターウルフにとって火星もエジプトも同じようなものなのではないか。というひらめきが訪れる1曲。夏の暑いに日に、ビールをガンガン飲みながら爆音で聴いてみたい。

 そして「ワイルドレストラン」。ギターウルフの注文は、宮沢賢治よりも少ない・・・のか。「食べたいのは君のからだ」とストレートに歌う4曲目は、フライパンの上で熱くなってるらしい。わけわかんなーい。が、3ピースのウルフロックンロールが言葉を強力に結びつくと、予定調和の文体なんてハナクソみたいに消し飛ぶんだ。「島根スリム」と歌ったギターウルフは、日本語でロックンロールする可能性を、限りなく広げている・・・のだろうか。

 最後の「デビルクチビル」。この曲、1~2歳児に聴かせて、一緒に歌ってみたい。きっといけると思う。そういえば2009年12月6日の札幌ベッシーホールでは、この曲を披露した後に「UFOロマンティクス」をやってくれた。イイ思い出です。「高校生アクション」「環七フィーバー」と同じくらいギターウルフの定番曲となりそうな「ジェットサティスファクション」も最高だが、おまけのDVD が、おまけ以上の魅力があるんです。なんてたって、俺が痺れた2009年のライジングサンの映像が収められているんだから!


↑DVDのタイトル画像

 ちなみに新代田FEVERの日付、裏ジャケとインサートのクレジットでは「march 3,2009」となっているのに、DVDのオープニングキャプションでは「march 23,2009」となってます。いずれにせよ、1発目の「環七フィーバー」で一気に最高速度のミラクルロックが飛び出すんだ。ンな細かいこと、どうでもいいじゃねーか、ってUGなら言いそう。俺もその通りだと思う。

 そんな3人のウルフたちに会いに、2010年1月24日の恵比寿リッキドルームへ行こうと思っている俺でした。