おんがく、あれこれ

 2012年6月30日(土曜)は、ヒルトン・ニセコヴィレッジ(ニセコ町)で開かれた「森のカフェフェス」に行った。

 野外コンサート主体の「夏フェス」なんですが、会場内に出店しているお店が、そのイベント名のとおり「カフェ」が多数。ドリップでコーヒーを淹れたり、エスプレッソマシーンでカフェラテを作ったり、ビールよりもコーヒーが飲まれるという、ハイネケンが当たり前のフジロック、サッポロ黒ラベルがおいしいライジングサンなどのロックフェスに慣れている身の上(私)には、非常に、非常に不思議なイベントだった。

 出演アーティスト陣も、オーガニックと言えばいいのか。地下室+アルコールよりも、木漏れ日+コーヒーが合いそうなラインナップ。原田知世、アン・サリー、Chocolat & Akito、コトリンゴ・・・というメンバーで、正午から夕方まで、のんびり/まったりした音を聞かせてくれた。

cafe_fes2012

原田知世はまぶしかった

 会場は、右手に羊蹄山がドーンと広がる、ヒルトンのゴルフ練習コースと思われる草地。好天に恵まれ、午後2時ごろまで、座ってるだけで汗がじわーっと出てくる
感じ。でも、風が吹けばすごく涼しい。

 そんな高原のステージで、原田知世はラストに「時をかける少女」を披露。ギターとボーカルのデュオ編成ながら、ちょっとサウダージな雰囲気のボサノバアレンジで聞かせてくれて、感激した。「過去も未来も 星座も越える・・・」。ユーミンが書いたこの詞自体が良いのに、アレンジが変わるともっと良くなるのか。文字通り、感涙もんだった。背筋をピンと伸ばして、座りながら歌う原田知世。すごく、すごくまぶしかった。

イッツ、キュート!Chocolat & Akito

 続くChocolat & Akito。おそらく5月の帯広ライブで、ばんえい競馬を見て、さらに札幌で観光幌馬車の銀太君にも会えたことを、曲間のMCでうれしそうに話していたのがほほえましかった。しゃべるとドラえもんみたいなのに、歌うとぜんぜん別人。そんなChocolatのギャップと、夫のAkito(グレート3)の2人は、不思議なバランス感を保ちながら、ニセコの森で温かい音をつむいだ。打ち込み入りの曲で出だしをトチったり、パーカッションを叩くタイミングが、かなりぎりぎりに際どかったりするChocolat。彼女をサポートするような、Akitoの心の温かさも見えてくるような、キュートなステージだった。

うれし涙、わらい涙 コトリンゴは良いなぁ

 そしてこのフェス最大の収穫がコトリンゴ。フリッパーズギターの「真夜中のマシンガン」、オリジナルの「みっつの涙」などなど、カバーもオリジナルも自在に歌い、時にジャズっぽいフレーズをちらつかせながら歌う雰囲気から「わ!矢野顕子みたい!」と直感。肩の力を抜き、無理に力まずに歌うような、かすれるような歌唱は、大貫妙子をほうふつとさせる。と書くと、ちょっと言いすぎかな。

 芯に熱いものが宿ってそうなコトリンゴのピアノのテクニックと、独特の透き通るハスキーボイス。その性能にはうすうす感づいていたけれど、ドラム+ピアノという極小編成で、ほぼネイキッド状態であっても、わぁ。グッと聴かせてくれる。2011年のワールドハピネスで彼女のパフォーマンスを初めて見たときも「いいなぁ」と思ったけど、そのときよりも少しスリリングで、なのに解放的な雰囲気で、超ステキだった。

おいしいコーヒー、ベーグル

 と、こんな具合に出演陣もナカナカだったが、フード/ドリンクの出店ブースのクオリティも高かった。地元ニセコのカフェ「高野珈琲店」のアイスカフェラテは、これまで飲んだどのカフェラテよりも美味。コーヒーのほどよい苦味と後味、そして存在感のある牛乳のコク。コーヒーと牛乳のシンプルなデュオが、良い味出してた。

 「高野珈琲店」はベーグルも販売していて、ベーグルなんか絶対買って食べない!と食わず嫌いだった私の味覚を、大いに是正してくれるおいしさだった。硬すぎず、やわすぎず。ほどよい弾力の、ほどよい食感。

 こんな具合に、コーヒーとベーグルが似合うフェスは、今回が道内初開催。お客はそんなにバカスカ入っている印象ではなかったですが、ちびっ子からおばあちゃんまで、親子3世代で楽しめる雰囲気の会場は、真剣に音楽を楽しむ/のんびりコーヒーを飲むといった具合に、来場客が自由にフェスを楽しめる感じだった。

 そんな会場の空気と、羊蹄山の良い山を眺めていたら、あっという間に5時間のステージが終わっちゃった。

 再びこんなステキなイベントが、北海道で開かれたらいいなぁと願っている。

 2年ぶりにライジングサン@石狩に行ってきた。
 
 くるり、DJ KRUSH+こだま和文(ともに8月12日)、Okamoto’s、にせんねんもんだい、Y.SUNAHARA(いずれも13日)が見られてよかったけど、腹が立つことも多かった。

 まずは良いことから書こう。

DJ KRUSH+こだま和文
 何よりもDJ KRUSH+こだま和文のジャズ~ヒップホップ~エレクトロニカを行ったり来たりするムーンサーカスの空気。これは自分の中で、今回のRSRの最高のパフォーマンスになった。

 ターンテーブルのスクラッチを音響マシーンとして駆使するKRUSHと、マイルス「死刑台のエレベーター」に吹き込まれたような、美しい流れ星みたいなミュートトランペットのサウンドを放つこだま和文の音楽的交感。でも単に「美しい」とか「キレイ」とかではなく、どことなくいがらっぽい殺気みたいなものが横たわっている。

 「この空気感だよなぁ。音楽を『おもしろい!』と思う瞬間て・・・」

 なんて考えるスキも与えないほど、地に足がしっかりついているけど、浮遊感あふれるパフォーマンスが繰り広げられる。不思議なステージだった。こだま和文のエレキカリンバもよかった。金属音なのに豊穣。その音に、ぶっといキックと軽やかなスネア。そしてKRUSH節ともいえるちょっと絶望的な、でも希望が持てそうな、破壊=再生を予感させるベースラインに乗っかって、エレキカリンバが鳴り響く。気持ちよかったなぁ。

 このKRUSH+こだま和文のダブ処理は、DUB MASTER Xが担当したんだそう。さらにボーカル(ラップ)で入った降神(おりがみ)のお兄さんも、なんかヨカッタ。第3次世界大戦。核戦争。いろんな恐怖やふざけたことはあるけれど、もっと前を、そのまたもっと前を想像して生きよう。なんて具合のポジティブなラップ。ただこう書くと、よくありがちな安トラックのクソヒップホップに堕しそうな思えるけど、さにあらず。そこに色即是空・空即是色なブッディズムに通じる質実剛健なマインドが、エレベーターシャフトのようにしっかりと内蔵されている。すごく説得力のあるラップだった(ちょっと着いていけないなと思う場面もあったけれど、これがKRUSH節にピッタリフィットしたのが不思議)。

くるり
 くるりは、いつかみたいなーと思っていたバンド。俺は「リボルバー」がいちばんすきなんだけど、さすがにライブでこの曲を再現するのは難しいわな。と淡い期待を抱いていたら、1曲目は「ブレーメン」。さらに続いて「ワンダーフォーゲル」。なかなかイイ。トランペット入りの5人編成になったらしいが、このバンドの大事な部分=独特のベースラインと、それに乗っかるギターの、弦楽器のバランスは相変わらず均衡が保たれていて、いいなぁと思った。さらに高田漣もゲストで参加!ここで演奏した「温泉」は、マジで気持ちがよかった。岸田のウンコトークは笑えた。

Okamoto’s
 Okamoto’sはマジクソぶっ飛んでた。全部の曲が好きではないけれど、ドラムがキース・ムーンのように高密度乱打し、ベースが手弾きで硬くて速くて重くて低いメロディーを奏で、ギターが発狂する。そしてボーカルはマラカスを振っている。最高なバンドだ。このちょうど6日前のWorld Happiness@東京・新木場でも見たんだが、そのときは15分くらいしか持ち時間が無く、消化不良でライブを見たのが正直な実感。でも、この日は違った。リンク・レイとザ・フーのカバーは、新木場よりも尖ってた。特にフーの「Kids are Alright」。ハマ岡本がジョン・エントウィッスルそのもの!と錯覚した瞬間が、何回か訪れた。ギターの風車カッティング、ギターのノイズを揺らしまくるプレイは、めたくそカッコよかった!この張り詰めたROCKIな感じ。ワカイモンだからこそ奏でられる、鋭いビート感。客を突き放すような、疾風怒濤のインタープレイは、発狂もんだった。サンキュー!オカモトズ!彼らのTシャツとバッジとタオルを買えたのは、うれしい思い出だ。

 そんなOkamoto’sを直射日光浴びまくって発狂してみてたら、次のにせんねんもんだいで残りHPは限りなくゼロに近かった。だから生まれて初めて、芝生(というか、荒っぽい茎)の上で寝転びながら、彼女たちの電撃インストディスコを聴く。1曲目はキーボード入り、2曲目はギターの足元で制御するシーケンサーが特徴的な曲。で、驚いたのが3曲目(というか、最後にやった曲)。ギターがシューゲイザー状態で、ビカビカしたノイズをぶちまけまくる!なんだこれ!すごい!ちょうど1週間前の8月7日、恵比寿リキッルームで見たときよりも、荒くれまくってたような気がする。ただ、できれば夜に聴きたかったな。

Y.SUNAHARA
 最後はY.SUNAHARA。「LOVE BEAT」「The Center of Gravity」など、名曲の美メロたちをクールな映像に載せて、砂原氏がぶっ飛ばしまくった!サウンドのミックス、映像のエフェクトをともにKraftwerk「Minimum-Maximum」な状態で、「現場」でそれぞれ加えていく。うわさに聴いていたスナハラマジックを、初めて見ることができて、うれしかった。レイ・ハラカミの「JOY」も飛び出して、なんだかエレクトロニカ全開の1時間。

 ・・・と書いてみて、気がついたのは、Okamoto’s(RED STAR FEILD)、くるり(SUN STAGE)以外は、みんなMOON CIRCUS。

 それも自分が「見たいな」と思っていたバンドにのみ、満足したている結果だ。

 悪くない。たしかに悪くないんだけど、前に行った2009年のRSRは「ぜんぜん知らないけどイイなぁ」と思えるバンドが、いくつかいた。それはパスカルズと、吾妻光良 & The Swinging Boppers。どっちもイイ意味でぶっ飛んでいて「うわー!音楽ってたのしい!」と感動する瞬間が、何度と無く訪れた。そして「RSRに着て良かった!」と感動したもんです。

 翻って今年はどうかというと、予定調和の音ばかりだった。あえて書けば梅津和時 KIKI BANDかなぁ。とは言っても、もそれほど神経にダイレクト注入、脳漿の深いところが刺激されるような音楽的興奮は、それほど訪れなかった。これまでいくつかの録音で音を聴き名前は知っていたけど、本人を拝むのは初めてという鬼怒無月(ギター)の動く姿を見られたのは興味深かったけど、めちゃくちゃ死ぬほど好きというギターの音でもないし「へー、この人かぁ」というくらい。

 なんだか今年のRSRは、パンチ力が例年以上に弱かった気がする。Join Aliveの影響もあるのだろうか、来場客もそれほど多くなかった気がする。ついでに言うと、グリーンオアシスのPAは相変わらずクソだったなぁ。あれは何とかならないのか。旧世代のOSで動いているサウンドシステム-。なんか、そんな聴こえ方だった。

 いや、むしろ逆に、これが普通のRSRなのかもしれないな。

 でも1万8千円(入場料)+2千円(駐車場)のチケットは、あまりにも値段が高すぎるぞ。ウエス!

 ・・・と、RSRの前後は感情がオーバー気味だったな。RSRの前にフリクション(レック+中村達也)、にせんねんもんだい、World Happinessを見たせいか、感情や音響をとらえる聴覚が尖ってたんだろうな。だからその感覚を差っぴけばたってフツーのRSRだったと思う。でも、やっぱりチケットは高すぎだな。

 2011年8月12日。今日から石狩湾で、毎年恒例の「Rising Sun Rock Festival」が開催される。DJ KRUSH、にせんねんもんだい、Okamoto’s、Y.Sunahara(砂原良徳)を見に、2年ぶりに行ってこよう

・・・と思っていたそんな朝、知人のブログを見て驚いた。

 ジョー山中が、亡くなったという。

 びっくりした。

 それと同時に、

 がっくりした。

 だってちょうど2年前の夏、RSRにジョー山中が、Flower Travellin’ Bandで出演したんだもの。石間秀樹の妖艶でぶっ飛んだ音色を奏でるイイ楽器・ギターラに載せ、名曲「SATORI」では驚異的なシャウトを聴かせてくれたし、元ハプニングス・フォーのシノ篠原のハモンドもいい味出してたし。

 開演10分くらい前は会場のアーステントが奇跡的にスッカスカで、最前列(石間秀樹の目の前)で見ることができた。でも終演直後、会場を振り返ると客が大勢。イイもん見たなと、日本のロック後追い者(俺)は感動したものです。

 とにかく、ジョー山中は日本のロックにとって、なくてはならない存在だ。

 FTBがいたからこそ、日本語でロックするべきか、英語でロックするべきか。なんてメロディーに歌を載せるギミックの考案がなされたわけだし。そこで興味深いのが、彼が歌う日本語のロックもイイということ。

 それはクニ河内、石間秀樹らと録音した「切狂言」。

 「セリフはうまく言えるかい?」

 シェークスピアの世界劇場(生きるものは皆、何かを演じている)をなぞるような、不思議な作品。ここに収録されている「タイム・マシーン」、「おまえの世界へ 」、「恋愛墓地」の3曲は、どう考えてもジョー山中以外、歌えない曲だと思う。彼だから歌えた、あのハイトーンボイジングがあったからこそ、オルガンとギターのノイズに埋もれることなく、「ROCK」できたのだろう。6~7年ほど前、この切狂言の復活セッションを見たとき、ジョー山中の声量とシャウトに、度肝を抜かれた記憶がある。そのとき、そんなことを感じたもんです。

 だからといって観客をロックの彼岸へ突き放すだけではなく、老若男女の聴き手の耳をきちんとソフトランディングさせるエンターテイナーとしての才覚も、確実に持ち合わせていたジョー山中。ライブ終盤には「スタンド・バイ・ミー」を歌い、マイク片手に会場を歩き回り、観客とコールアンドレスポンス。「なんか恥ずかしいな」と思ったけど、今思えばあれは、ジョーのフトコロの広さとサービス精神だったんだろうな。

 もし、ジョー山中がいなかったらと妄想してみる。

 (1)FTBはいなかった
 (2)切狂言もなかった
 (3)人間の証明のテーマもなかった

 それはつまり、日本のロックがもっとつまんない状態だった、ということ。

 彼がいたから、かつての日本のロックはとてつもなくおもしろかった。

 だからこそ言いたい。

 ジョー、ありがとう!

 俺はギターも弾けないしジョーのようにシャウトもできないし声量も無いけれど、これからもFTB、切狂言、そのほか彼の録音された歌声を、聴き続けようと思う。

 ジョー。今日の札幌の空は、晴れているよ!

 これから、石狩湾に行ってくるぜ。

 帯広が誇る鋭角パンクバンド黄金クリムゾン。俺が彼らのライブを初めて見たのは、2010年11月。遠藤ミチロウのオープニングアクトで出演したときだった。尺はわずか20分程度だったと思う。正直に言おう。客は思ったよりも少なかった。にもかかわらず、極低温のライブハウスを四の五の言わずに、1・2・3・4のカウントで、一気に最大戦速まで加速させるハイスピードで不審船を撃墜するイージス艦みたいな、タイトなロックンロールをぶちまけた。そして炎上した。俺のココロが。完全に。

 不審船(俺)はステージの大海原を爆走するイージス艦の全方位レーダーに完全に補足され、逃げ場を失っていた。逃げようにも、時速8万ノットの超快速で疾駆するイージス艦が追いかけてくる。俺にジャミング装置はない。光学迷彩なんてもちろんない。1981年製の、肉と骨でできたヤワな船体だ。だから気がついたときには、ミサイルみたいなギターとベース、さらにドラムという名のバルカン砲による全開フルスロットルの完璧な爆撃を受け、俺の心は完全に打ちのめされたていた。からっぽだ。からっぽの世界だった。そのからっぽの世界になった脳みそにダイレクト注入するかのごとく、極鋭角のスルドすぎるパンクが俺のカラダを蝕んでいった。

 それは快感だった。やったことはもちろんないけれど、きっと高純度のドラッグのに近い効き目だったのではないか。

 そして遠藤ミチロウ。ギター1本で、かくまでも人間の怨嗟や憎悪を歌うことができるのかと、それはそれは恐れ入るパフォーマンスだった。鬱屈しながら、しかし突き抜ける。三上寛と入り口は異なるが、出口は一緒。そんな不気味さに驚きつつ、アンコールがはじまった。なんと、黄金クリムゾンの3人とスターリンのカバーを絶唱。

 「毒殺!毒殺!毒殺!」

 それはキレイで安心して着地できるブルーハーツ(俺は大嫌いだ)的なOSとは180度真逆にある、殺気と怒気が束になって襲い掛かってくる、鋭角にさらに鋭角の磨きがかかった切れ味の鋭い、鋭角の鋭角なパンクだった。

 仏像でいえば不動明王。

 ファイナルファンタジーならバハムート。

 マイルス・デイヴィスのアルバムで言えば「ダーク・メイガス」。

 憤怒の面構えでメガフレアを繰り出し、聴き手(俺)のクソみたいな日常と煩悩をマッハで焼失させる。これは菩薩だ。みうらじゅん的に言えば、ロックンロールによる救済だ。

 安易でヤワでデリケートでクソみたいな俺のハートは、不動明王に完全に燃やされた。

 「こんなバンドが帯広におったんや!」

 俺は降参して、黄金クリムゾンのファンになった。

 そして今、俺の脳みそは黄金クリムゾンに占領されている。

 北海道のやや真ん中にある冷凍都市、帯広で活躍する”高速ブルースパンクバンド”こと黄金クリムゾンと、青森を拠点にイカしたロックンロールを響かせているWAYBARK(ウェイバー)のライブが2011年1月23日、帯広のライブハウス「REST」で開かれた。

 黄金クリムゾン、WAYBARKの2バンドで札幌、北見、帯広、小樽を回る北海道対バンツアー「黄金クリムゾン×THE WAYBARK
~夏の魔物 北海道完全感染計画~北海道TOUR 2011」と銘打った道内ライブの3日目。初日の札幌HALL SPIRITUAL ROUNGEもかなりにぎわっていたが、帯広RESTも負けちゃいねぇ。黄金クリムゾンのホームタウン帯広では、そりゃ盛大で骨太で高速なパンクロックを鳴らしまくっていた。

 んがしかしWAYBARKも負けちゃいねぇ。ボーカルのだいち69(今年で25歳!)のアグレッシブなパフォーマンスを交えた歌唱で、「俺、黄金大好きだけどWAUBARK見るのは初めて」という帯広のロック男子(20代後半)を「うわ、超すげぇ、まじかっけええ」と感動の渦に巻き込むほど、イカレタまくったロックンロールを炸裂。爆裂。

絶唱するだいち69(WAYBARK)2011.01.23@帯広REST

絶唱するWAYBARKのだいち69

Johnny(WAYBARK)

Johnny(WAYBARK)

 WAYBARKの曲名は、まだ全部アタマに入っていない。でも彼らの1千円のアルバム「マイ・ジェネレイション」収録の「happy happy ~寂れた町の冬~」は、「すぐに曲名を覚えたい!」と思いたくなる曲だった。ロックンロールのすきまに、突如エアポケットのように現れるスローパンク。ギターのノイズがフェードイン状に強まっていって、北国特有の極低温からのカタルシスを爆発させる・・・。みたいな曲だ。曲の雰囲気は大幅に異なるけれど、この驚きは2004年くらいにメジャーデビュー前の50回転ズ関西で見たとき、彼らが鳴らした「天王寺エレジー」に衝撃を受けたのと、ほぼ同じ衝撃を感じた。この曲には彼らの可能性を感じたなぁ。

 で、WAYBARKの次が黄金クリムゾン。彼らのいいところは、語りたいことを音塊にこめていること。アンプから破壊力と殺傷能力の非常に高い、鋭角的で攻撃的な音を出している、北海道でも稀有なパンクバンドだと直感している。そんな黄金クリムゾンのメンバーは、シンタロウ(vo&gtr)、ちゅんちゅん(bass)、Shinya(drums)の3人。

 とにかくすごいのが、ドラムとベースの2人だ。Shinyaはビースト系なパンチ力のあるドラミングなのに、たたき出したパワーが一か所にとどまらず、ツボをつくように的確に解放するような、突き抜けるリズムを刻む。そしてその突き抜けるリズムを追いかけるように、ちゅんちゅんのベースがリズムとリズムの谷間を接着剤のようにつなぎとめる。元ギタリストということもあってか、ピックで手数の多いベースを弾くのがうれしい。これがライブをこなすごとにベースの振動力が強まっていく(あくまで勝手な外野の意見)ような気がする。それは「ゴールデンカップスのルイズルイス加部も、こんな感じだったんじゃないか」という予感すら抱かせるほどだ(あくまで勝手な外野の意見)。

 だが、この2人だけじゃぁ黄金ロックは成り立たない。3人のメンバーではいちばん若手なのに、やたら日本のロックに精通しているシンタロウの頭脳と、ギターノイズが無けりゃだめだ。この日のライブではいきなり弦が2本切れるというハプニングがあったものの、それでも弾きまくる。これはもう、ギターウルフに近い美しさだ。ライブの中盤では客をステージに上げ、ギターを弾かせるというロックアクションもあり、まさかの4人編成体制で、帯広のロックシーンを盛り上げている。熱いバンドだ。

 前の投稿から、あっという間に1カ月・・・。

 せっかくブログシステムを立ち上げたんだから、更新しなきゃ。

 てなわけで、ここ最近で仕入れたブツ(音源)を開陳してみよう。

 ・ザ・トーイズ「昭和二世」(7インチ)

 ・寺内タケシとブルージーンズ「レッツ・ゴー・ジャンジャン」(7インチ)

 ・外道「ビュンビュン」(7インチ)

 ・遠藤賢司「遠藤賢司録音大全 第1巻 1968~1976」(CDボックス)

 ・遠藤賢司「遠藤賢司録音大全 第2巻 1977~1986」(CDボックス)

 ・郡山「ワン・ステップ・フェスティヴァル」CD(4枚組みCD)

 こんなところ。

 何よりも「昭和二世」。カルトGSのコンピCD「GSアングラカーニバル」を聴いたとき、松平ケメ子の次に感動したのが、ザ・トーイズの「昭和二世」だった。1968~69年のヤングの世相と心情を、いかしたエレキビートにのせて歌うこの曲は、戦争を知らない世代(その息子世代にあたる自分を含む)の「文化」を的確に真空パックしたような佳曲だ。

 続いて「レッツ・ゴー・ジャンジャン」。某オークションであせって入札。割と安価で買えた。大阪ミナミのジャンジャン横丁とは関係ありそうでなさそうな、やけっぱちのブルージーンズビート。10年くらい前は寺内タケシとバニーズがキてたが、最近はバニーズ後のブルージーンズもなかなかに侮れない存在だと思っている。

 外道の「ビュンビュン」の7インチは、ウワサどおりホーンセクションがオーバーダブされてて苦笑してしまう。でもね、そのホーンのアレンジが、ワンパターンじゃなくて、微妙にフレーズを変えたりしているのだ。そんな無駄な努力に1票入れたくなるものの、別にホーンがなくてもいいじゃねーかというのが正直な感想。なぜホーンを入れたのか。謎のだらけの外道。もちろん、ホーンがないほうがかっこいいのだけれど。

 そしてエンケン。俺、エンケンはボブ・デュランより好きです。ボブ・デュランは作詞家みたいなもんで(ボブファンの方、すみません)、彼の歌をカバーしたジミヘンなりバーズのほうがグッとくるのだ。そこへくると、エンケンは自分の曲をほかの誰のカバー以上に、かっこよく歌い、背筋が凍るようなフレーズをギターとハーモニカ(ときに打ち込み)で表現してしまうのだ。それがボブにできるか?ボブはそれをやったか?自分の曲を、自分以外の誰よりも自分の曲として歌い上げる才覚。そんなエンケンの才能を、この2箱のボックスは的確に教えてくれる。借金して買ってよっかったよー。

 最後は郡山「ワン・ステップ・フェスティヴァル」。外道や四人囃子など、1980年代生まれの日本のロック後追い者にとって、ライジングサンよりもフジロックよりもハッピーなこのフェスにあこがれている。正直なところ、ふざけたエコ思想やまがいもんのラブ&ピースを高いゼニを払って押し付ける21世紀の音楽フェスよりも、1974年、東北新幹線もまだ開通していなかった郡山で開かれたワン・ステップ・フェスティヴァルにこそ、音楽フェスの可能性と情緒、魅力を感じるのである。ウッド・ストックは、海の向こうの遠い国のできごとではない。日本にも、かっこいいバンドがゴマンといる。そんな当時のバンドのステージの奇跡的なドキュメント。この音源を通じて、はじめて「はちみつぱい」を聴いた。ずっぽりはまった。もし当時、自分がナマではちみつぱいを見ていたら、絶対にはまっただろうと思う。

 こうして音楽的散財は続くのであった・・・。

 2009年のフジロック。北海道から寝台特急「北斗星」に揺られ、大宮で新幹線を乗り継いで初参戦した。テント、寝袋、コンロ、酒。10キロくらいのあれこれをザックに突っ込んで、苗場の山でテントを張った。

 雨に打たれ、風に吹かれ、宮沢賢治のような世界で繰り広げられた夏祭り。生まれて初めてナマで見るスティーブ・ヒレッジのGONG & SYSTEM7でのギターアクションに大感動し、フェラ・クティの実子(だったけ)のセウン・クティ率いるエジプト80の強靭なグルーヴ感のとりこになったり、ポリシックスを好きになりそうになったり(このときのステージはすごくよかった)、頭脳警察の”意外”なハマリ具合にうれしくなったり。

 そんな苗場の山の2日目、前日の雨が上がってドバーっと晴れ渡った。北海道に住んでいるとなかなか体験できない日本の夏って感じ。テントの外に出てiPodでガンガンに音楽を聴いて日記を書いてたら、広島からきたサンフレッチェ広島を応援している男性となんとなくハナシをした。

 サンフレッチェ氏は首からライジングサンのパスケースをぶら下げてた。紫色のサンフレッチェユニフォームも着ていた。

 「俺、北海道から来たんですよ」

 なんて話し始めると、パスケースをおもむろに取り出して、サンフレッチェ氏はニコリとして

 「これ、最初のライジングサンに行ったときのパスケースなんですよ」と話した。

 最初のライジングサンと言うことは、1999年。ちょうど10年前。その当時俺は高校生。今の音楽なんてツマンネー、なんてうそぶいて、ブルーノートとマイルス・デイヴィスを妄信するような、排他主義的アホリスナーだった。せいぜい、ゆらゆら帝国がかっこいいなーと思ってるくらいの、北海道田舎在住の盆暗野郎だった。

 「もう10年なんですか。なんか、ちょっと前みたいな気がしてたんですけど」

 そんな具合に苗場の山で10年前を振り返る。

 「あのときは、ナンバーガールとスーパーカーも出たんだっけな」

 サンフレッチェ氏がおもむろに話し始めた。

 俺より2歳年上の彼にとってナンバーガールは別格のバンドだったそう。その当時の俺は上のようなアホ音楽生活を送っていたために、ナンバーガールのスゴさに気づかない盆暗な高校3年生だった。そんなアホ高校生がアホ大学生になって社会人になりかけるとき、ナンバーガールの「SAPPUKEI」を聴きなおして「このバンド、スゲー!」と感動したのだった。

 でも、そのときはとっくにナンバーガールは解散し、向井秀徳はZAZEN BOYSでギターを弾いていた。

 あのときライジングサンに行ってたら、ギターウルフと一緒にナンバーガールも見れたんだ。逃したサカナはデカイ。そのデカさを、苗場の山で気づいた。

 そして2010年。

 今度はもうひとつ、逃したサカナのデカさを思い知らされた。それは青森出身のバンド、スーパーカー。「Futurama」を改めて聴いて、かつてのナンバガールと同様の後悔の念を抱いている。なんで、あの当時ナマのステージを見なかったんだ!なんであの時、このバンドの音をちゃんと聴いてなかったんだ!と。

 2010年1月、「Futurama」にずっぽしはまっている。

 ROVOを聴く耳にはあまりにもストライクゾーンなイイ曲「White Surf style 5.」でトランシーな世界が広がったかと思えば、日曜日の午前中の空気感を音像化したようなハッピーな曲が万華鏡をのぞくような感じで、あるいはやや荒削りなコーネリアスみたいな感じで、次々とスピーカーから飛び出してくる。

 エレクトロニカ化した雪国出身のナンバーガール。「Futurama」のスーパーカーを乱暴に表現してしまえば、そんな具合になろうか。北海道出身者の自分としては、雪と冬の感覚をロックのイディオムでうまく結晶化したバンドだなと、このアルバムからそんな感慨を抱く。

 でもスーパーカーはもういない。ILLじゃ、やっぱり違う。キラキラ感が違う。ナンバーガールとスーパーカーを聴いて、10代から20代を駆け抜けたかった。

 そんな後悔を抱くたびに、苗場の山で出会ったサンフレッチェ氏がうらやましく思えるんだ。

 なんかこう、シャカイジンとして生きているということは仕事=金、タイム=マネーなカラクリで生きているわけでして、逆に言えば仕事しなければ生きていけない/カネがない=レコードが買えないwithライブにも行けない・・・

 わけなんでありますな。

 そんな今日この頃、レコードを買う、あるいはライブに行くための資金を集める、ために俺は働いているわけで、気がつけばちっと更新できずに1月が過ぎようとしている。

 光陰矢のごとし。

 先人は、うまい形容詞を作ったもんだ。ビューチフォー。

 そんな今日この頃。でもCDはバシバシ買ってます。

 最近の高額商品ではヴェルベット・アンダーグラウンドの通称「黒バナナ」こと、1stアルバムのアセテート音源、2ndアルバムのMONO音源などが収録されている音源を買ってしまいました。MONOで聴く「SISTER RAY」はヤバイ。ルー・リードとジョン・ケイルの才覚が、掛け値なしの真っ向勝負を挑んだドキュメンタリー要素が、心なしか強化されている気がします。んが、正規音源のステレオ盤を再生すると「こっちもいいなー」。いったいどっちがいいんだ!わけがわらなくなるモノステの境界線。その辺縁を行ったりきたりするヴェルベッツ。かっこいいぜ。

 続いて布谷文夫の「ロストブルースデイズ」。なんとなく「2人のブルース」のいろんなオトを聴きたくなったので、布谷文夫~DEWの音源で格安で捕獲できるものをできるだけ買いあさっている1月です。それにしても「立ち眩みライブ」が高価で取引されているなんて、ちょっと信じられない。どうでもいいけど「2人のブルース」のベストアクトは、今のところ「幻野ライブ」だと思っております。

 その幻野ライブをひさびさに聴いて、郡山ワンステップフェスティバルのCDが気になり始めました。その昔、某雑誌でディスクリビューを書かせてもらっていたとき、ついつい買い逃してしまった昭和日本ロック史の準重要アイテム的ブツだと、数年目にして気づいたのだった。乗り遅れまくれの俺。既に購入不能状態ながら、奇跡的に某オークションで偶然見つけて即BUY。これで四人囃子や外道を、ちゃんと聴けるぞ。わーい。

 このほか、CDがあるはずなのに自宅でディスクが遭難している鉄腕アトムのトリビュート的アルバム「Electric-Brain Featuring Astroboy」も中古安価でゲット。ジャンルはいきなりテクノ~エレクトロニカ路線にシフトしますが、これに収録されてるROVOの「ASTROVO」が泣けます。

 原子力で動くマシーン=アトムというロボットに、喜怒哀楽の微妙な感性を与えるような、そんな感性を先天的に抱いているような。ツインドラムの駆動力とベースのクールなグルーヴ感(この曲で「ROVOのベースはかっこいい!」と気づきました)、そして勝井祐二の天衣無縫なエレキバイオリンの音色と残響。天馬博士の理学を超えたピースフル=原子力の純平和利用、みたいなストレンジでスウィートな優しさを感じさせる音塊が何年かぶりにスピーカーから飛び出して、俺のハートもピースフル。ところで気持ちを落ち着かせて音を聴いてみると、奇才・山本精一のギターがぜんぜん聴こえないのが気になった。

 手塚るみ子さんって、侮れない存在だと思います。父の手塚治虫の作品と、エレクトリックミュージックとを結びつけた稀有な存在。この「Electric-Brain Featuring Astroboy」だけでなく、スティーブ・ヒレッジ率いるSYSTEM 7で「PHONIEX」(あるいはHINOTORI)のコラボを実現させて、しかも去年のFUJI ROCK FESTIVALで「HINOTORI」をナマで聴けたんだもん。日本人でよかったーと思う今日この頃です。

 この駄文は会社の飲み会の帰りにドバーっと書きました。

リンク・レイ「アーリーレコーディングス」(Link Wray Early Recordings)

 2009年9月のシルバーウィーク。遠藤賢司のライブ2本と年に1度のロックンロールイベント「ロッケンローサミット」を見に東京へ遊びに行ったとき、新宿のディスクユニオンで「なんじゃこれ!」と釘付けになったのが、Link Wrayのこのアルバム。ペラペラな紙ジャケで、黄色いバックに赤い文字でLink Wrayとあるやたら目立つジャケット。Link御大はトレードマークとも言えるものすごいボディのギターを、真剣な表情でかまえている。ここで笑顔を見せていないのがイイ。すかさず帳場に持って行きました。

Link Wray / Early Recordings
1. Batman Theme
2. Ace Of Spades
3. Cross Ties
4. Jack The Ripper
5. Hidden Charms
6. I’m Branded
7. The Shadow Knows
8. Fat Back
9. Run Chicken Run
10. Black Widow
11. Scatter
12. Turnpike Usa
13. Mr Guitar
14. Rumble

 サーフ/ホッド・ロッド系の定型的ロックンロールとはベクトルを異にするような、独特のザラついたフレーズでロールしまくるLink Wrayのギターサウンドがテンコ盛りのアルバムは、まさに「Early(早すぎた)」ガレージロックの総本山みたいなものか。「そんな音楽ばっかり聴いてたら頭が悪くなるからやめなさい!」とお母さんに怒られながら、でも「俺もバンドやりたい!リンク・レイみたいな、かっこいいギターを弾きたい!」というアメリカの男子のハートをわしづかみにするキラーチューンは、ともすれば録音から60年近くたった21世紀の今だって、十分にキラー過ぎる。

 名曲「Batman Theme」はもとより、ダークなギターリフがたまらない「Ace Of Spades」「Jack The Ripper」「Fat Back」の3曲は、題名を見ないと同じ曲だと思っちゃうくらいの金太郎アメ状態。でもそれでいい!これがいい!。「Black Widow」ははYardbirdsがカバーしてそうな気がする。そして「Hidden Charms」はもう完全に、適正なガレージナンバー。「ガレージ」を巡る解釈はさまざまあれど、ノイジー、とっぽい感じ、ザラザラ、ギラギラ、ラフ、荒削り、かっこいリフ、という要素をガレージとするならば、その条件を全部満たしている怪曲。安直なリズムに、かっこいギターがギャンギャン鳴りまくるんだぜ。

 そしてシメの「Rumble」。もしこの曲をLink Wrayが作っていなかったら、ギターウルフのライブのエンディングはどうなっていたのだろうか、そしてギラギラ系のロックンロールの歴史は、今よりもうちょっとおとなしくなっていたのではないか、なんて妄想がどんどんわいてくる。

 とにかくかっこいいLink Wray。やっぱり1950年代~60年代のアメリカのロックンロールは、永遠にかっこいいと思いたくなる。そんな空気感が、ギュッと真空パックされている1枚。1家に1枚、Link Wray!

 昨年末、関西を旅したとき、大阪は心斎橋のタイムボムに初めて寄ってみた。うわさの通り、1960年代のいかしたブツがたくさんあった。キンクス、60ズUSガレージ、ニートなビーツがぎょうさん。てんこもり。そんな店で最も気になったのは、ヴェルベット・アンダーグラウンドの7インチボックスセット。

 「いつのまにこんなハコが出てたんですか」。2009年はビートルズ箱、クラフトワーク箱、さらにワイルドワンズ箱を格安でゲットするなど、ハコの物欲はすさまじい。まさにハードコア。いや、そんなマイナス273度な絶対零度のギャグはともかく、ヴェルベッツのハコを心斎橋で見かけたとき、俺の心はガクガクと揺れた。だって、死ぬほど好きな「White Light,White Heat」の7インチ盤が、2枚も収められているんだぜ。

VELVET UNDERGROUND Singles 1966-69

THE VLVET UNDERGROUND SINGLES 1966-69 (sundazed 2009)

Single One – ALL TOMORROW’S PARTIES / I’LL BE YOUR MIRROR(Verve VK-10427)
Single Two – SUNDAY MORNING / FEMME FATALE (Verve VK-10466)
Single Three – WHITE LIGHT,WHITE HEAT / HERE SHE COMES NOW (Verve VK-10560)
Single Four – WHITE LIGHT,WHITE HEAT / I HEARD CALL MY NAME (Cancelled Single)
Single Five – TEMPTATION INSIDE YOUR HEART / STEPHANIE SAYS (Cancelled Single)
Single Six – WHAT GOES ON / JESUS (MGM K-14057)
Single Seven – VU RADIO SPOT (MGM VU-1)

VELVET UNDERGROUND Singles 1966-69

 と書いてみても、CDの音源でしか慣れ親しんでない聴覚には、どんな音が収められているのかさっぱり想像がつかない。でも、死ぬほど好きな(ってしつこいな!)「White Light,White Heat」が、7インチで聴けるのだ。うぅぅ~~~ん。ほわいらい♪というわけで、迷わずレジに向かった。ちなみにタイムボムのお値段は4980円。かんたんな日本語解説(A4用紙1枚)もついてきた。

 7インチハコを慎重に北海道へ輸送し、帰宅して針を落としてみた。もちろん、最初に聴いたのは「White Light,White Heat」。1曲のために記録メディア(円盤)のすべてを使う7インチ盤は、音楽にとって最も幸せなフォーマットだなと思う。そんなぜいたくが、ヴェルベッツで味わえるのだ!これを幸せと言わずに、なんと言おうか!

 ・・・という前置きはともかく、Single Threeの「WHITE LIGHT,WHITE HEAT / HERE SHE COMES NOW」。これがMONOの音なんです。いままでステレオ音源アルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」ばっかり聴いていた耳には、より音が悪くなり、音のくぐもり方が強くなったこの7インチ盤のほうが「ヴェルベッツらしいかも」と感じている。B面の「HERE SHE COMES NOW」もCDのほうが明らかに音質はくっきりしているけれど、やっぱりヴェルベッツらしいな~と、同様の感覚を抱く。

 そしていちばん気になっていたSingle Four。「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」こそSingle Threeと同じだけど、B面の「I HEARD CALL MY NAME」がやばすぎ。アルバムではまぶたの裏にギラギラ光る非日常のLSD体験(俺はやったとこないけれど)を音像化したような「SISTER RAY」のオーバチュアとも言えるこの曲は、モータッカーがドコドコとドラム叩きまくる快適なグルーヴ感に、フィードバックノイズが銀河のように渦巻き、銀色と黒色の2色だけで発狂するロックンロール。その銀河系ロックンロールが、7インチの溝にがっしりと、しかもMONO音源で掘り込まれているのだ。この曲だけでも、ボックスを買う価値はあると思う。

 ニコのボーカル&ウォホールとジョン・ケイル脱退後のヴェルベッツには食指があまり動かない自分にとって、すなわちアルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」が死ぬほど好きな自分だからこそ、この3枚目と4枚目のシングルは重要なアイテムになりつつある。やっぱりルー・リードがベロベロに歌いまくって、ジョン・ケイルがギラギラ、ザラザラしたフレーズを多用するノイズ/サイケロックンロールバンドとしてのヴェルベッツは最高だ。

 このボックスセットのおかげで、今度はMONO盤のアルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」を探してしまいそう。