おんがく、あれこれ

 なんかこう、シャカイジンとして生きているということは仕事=金、タイム=マネーなカラクリで生きているわけでして、逆に言えば仕事しなければ生きていけない/カネがない=レコードが買えないwithライブにも行けない・・・

 わけなんでありますな。

 そんな今日この頃、レコードを買う、あるいはライブに行くための資金を集める、ために俺は働いているわけで、気がつけばちっと更新できずに1月が過ぎようとしている。

 光陰矢のごとし。

 先人は、うまい形容詞を作ったもんだ。ビューチフォー。

 そんな今日この頃。でもCDはバシバシ買ってます。

 最近の高額商品ではヴェルベット・アンダーグラウンドの通称「黒バナナ」こと、1stアルバムのアセテート音源、2ndアルバムのMONO音源などが収録されている音源を買ってしまいました。MONOで聴く「SISTER RAY」はヤバイ。ルー・リードとジョン・ケイルの才覚が、掛け値なしの真っ向勝負を挑んだドキュメンタリー要素が、心なしか強化されている気がします。んが、正規音源のステレオ盤を再生すると「こっちもいいなー」。いったいどっちがいいんだ!わけがわらなくなるモノステの境界線。その辺縁を行ったりきたりするヴェルベッツ。かっこいいぜ。

 続いて布谷文夫の「ロストブルースデイズ」。なんとなく「2人のブルース」のいろんなオトを聴きたくなったので、布谷文夫~DEWの音源で格安で捕獲できるものをできるだけ買いあさっている1月です。それにしても「立ち眩みライブ」が高価で取引されているなんて、ちょっと信じられない。どうでもいいけど「2人のブルース」のベストアクトは、今のところ「幻野ライブ」だと思っております。

 その幻野ライブをひさびさに聴いて、郡山ワンステップフェスティバルのCDが気になり始めました。その昔、某雑誌でディスクリビューを書かせてもらっていたとき、ついつい買い逃してしまった昭和日本ロック史の準重要アイテム的ブツだと、数年目にして気づいたのだった。乗り遅れまくれの俺。既に購入不能状態ながら、奇跡的に某オークションで偶然見つけて即BUY。これで四人囃子や外道を、ちゃんと聴けるぞ。わーい。

 このほか、CDがあるはずなのに自宅でディスクが遭難している鉄腕アトムのトリビュート的アルバム「Electric-Brain Featuring Astroboy」も中古安価でゲット。ジャンルはいきなりテクノ~エレクトロニカ路線にシフトしますが、これに収録されてるROVOの「ASTROVO」が泣けます。

 原子力で動くマシーン=アトムというロボットに、喜怒哀楽の微妙な感性を与えるような、そんな感性を先天的に抱いているような。ツインドラムの駆動力とベースのクールなグルーヴ感(この曲で「ROVOのベースはかっこいい!」と気づきました)、そして勝井祐二の天衣無縫なエレキバイオリンの音色と残響。天馬博士の理学を超えたピースフル=原子力の純平和利用、みたいなストレンジでスウィートな優しさを感じさせる音塊が何年かぶりにスピーカーから飛び出して、俺のハートもピースフル。ところで気持ちを落ち着かせて音を聴いてみると、奇才・山本精一のギターがぜんぜん聴こえないのが気になった。

 手塚るみ子さんって、侮れない存在だと思います。父の手塚治虫の作品と、エレクトリックミュージックとを結びつけた稀有な存在。この「Electric-Brain Featuring Astroboy」だけでなく、スティーブ・ヒレッジ率いるSYSTEM 7で「PHONIEX」(あるいはHINOTORI)のコラボを実現させて、しかも去年のFUJI ROCK FESTIVALで「HINOTORI」をナマで聴けたんだもん。日本人でよかったーと思う今日この頃です。

 この駄文は会社の飲み会の帰りにドバーっと書きました。

 昨年末、関西を旅したとき、大阪は心斎橋のタイムボムに初めて寄ってみた。うわさの通り、1960年代のいかしたブツがたくさんあった。キンクス、60ズUSガレージ、ニートなビーツがぎょうさん。てんこもり。そんな店で最も気になったのは、ヴェルベット・アンダーグラウンドの7インチボックスセット。

 「いつのまにこんなハコが出てたんですか」。2009年はビートルズ箱、クラフトワーク箱、さらにワイルドワンズ箱を格安でゲットするなど、ハコの物欲はすさまじい。まさにハードコア。いや、そんなマイナス273度な絶対零度のギャグはともかく、ヴェルベッツのハコを心斎橋で見かけたとき、俺の心はガクガクと揺れた。だって、死ぬほど好きな「White Light,White Heat」の7インチ盤が、2枚も収められているんだぜ。

VELVET UNDERGROUND Singles 1966-69

THE VLVET UNDERGROUND SINGLES 1966-69 (sundazed 2009)

Single One – ALL TOMORROW’S PARTIES / I’LL BE YOUR MIRROR(Verve VK-10427)
Single Two – SUNDAY MORNING / FEMME FATALE (Verve VK-10466)
Single Three – WHITE LIGHT,WHITE HEAT / HERE SHE COMES NOW (Verve VK-10560)
Single Four – WHITE LIGHT,WHITE HEAT / I HEARD CALL MY NAME (Cancelled Single)
Single Five – TEMPTATION INSIDE YOUR HEART / STEPHANIE SAYS (Cancelled Single)
Single Six – WHAT GOES ON / JESUS (MGM K-14057)
Single Seven – VU RADIO SPOT (MGM VU-1)

VELVET UNDERGROUND Singles 1966-69

 と書いてみても、CDの音源でしか慣れ親しんでない聴覚には、どんな音が収められているのかさっぱり想像がつかない。でも、死ぬほど好きな(ってしつこいな!)「White Light,White Heat」が、7インチで聴けるのだ。うぅぅ~~~ん。ほわいらい♪というわけで、迷わずレジに向かった。ちなみにタイムボムのお値段は4980円。かんたんな日本語解説(A4用紙1枚)もついてきた。

 7インチハコを慎重に北海道へ輸送し、帰宅して針を落としてみた。もちろん、最初に聴いたのは「White Light,White Heat」。1曲のために記録メディア(円盤)のすべてを使う7インチ盤は、音楽にとって最も幸せなフォーマットだなと思う。そんなぜいたくが、ヴェルベッツで味わえるのだ!これを幸せと言わずに、なんと言おうか!

 ・・・という前置きはともかく、Single Threeの「WHITE LIGHT,WHITE HEAT / HERE SHE COMES NOW」。これがMONOの音なんです。いままでステレオ音源アルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」ばっかり聴いていた耳には、より音が悪くなり、音のくぐもり方が強くなったこの7インチ盤のほうが「ヴェルベッツらしいかも」と感じている。B面の「HERE SHE COMES NOW」もCDのほうが明らかに音質はくっきりしているけれど、やっぱりヴェルベッツらしいな~と、同様の感覚を抱く。

 そしていちばん気になっていたSingle Four。「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」こそSingle Threeと同じだけど、B面の「I HEARD CALL MY NAME」がやばすぎ。アルバムではまぶたの裏にギラギラ光る非日常のLSD体験(俺はやったとこないけれど)を音像化したような「SISTER RAY」のオーバチュアとも言えるこの曲は、モータッカーがドコドコとドラム叩きまくる快適なグルーヴ感に、フィードバックノイズが銀河のように渦巻き、銀色と黒色の2色だけで発狂するロックンロール。その銀河系ロックンロールが、7インチの溝にがっしりと、しかもMONO音源で掘り込まれているのだ。この曲だけでも、ボックスを買う価値はあると思う。

 ニコのボーカル&ウォホールとジョン・ケイル脱退後のヴェルベッツには食指があまり動かない自分にとって、すなわちアルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」が死ぬほど好きな自分だからこそ、この3枚目と4枚目のシングルは重要なアイテムになりつつある。やっぱりルー・リードがベロベロに歌いまくって、ジョン・ケイルがギラギラ、ザラザラしたフレーズを多用するノイズ/サイケロックンロールバンドとしてのヴェルベッツは最高だ。

 このボックスセットのおかげで、今度はMONO盤のアルバム「WHITE LIGHT / WHITE HEAT」を探してしまいそう。