おんがく、あれこれ
電気グルーヴ
人間と動物

  1. The Big Shirts
  2. Missing Beatz(Album Version)
  3. Shameful(Album Version)
  4. P
  5. Slow Motion
  6. Prof, Radio
  7. Upside Down(Album Version)
  8. Oyster(私は牡蠣になりたい)
  9. 電気グルーヴのSteppin’ Stone
  • Ki/oon 2013/02/27
  • KSCL 2200-1

 ドイツが誇る“テクノ界のローリング・ストーンズ”こと、Kraftwerkが来日し“ほぼ1週間連続ライブ”を敢行する今年の電気グルーヴは、何かが違うようだ…。と、新アルバム「人間と動物」を引っさげた全国ツアー「ツアーパンダ2013」の札幌ライブを観て、実感した。

 観客たった3人のZepp札幌のライブ会場で、中年のおっさん2人は「Flashback Disco」「あすなろサンシャイン」「Shangri-ra」「N.O」などの名曲を、デバイス・ガールズの驚異的にハッピーな電装(ライティングと映像)をバックに熱唱した。

 石野卓球は悪ふざけする文系中学生のような、アホみたいなMCでしゃべりまくり(ライブの4分の1はしゃべってたか)、ピエール瀧はライブ時、「この人にしかできない、この人のタイミングでしかできない」シュールなパフォーマンス(小学校の学芸会で出てきそうなヤリを掲げる、など)をぶちまけた。これほど腹筋がぶっ壊れそうなほど笑ったライブは、初めてかもしれない。

 ちっともカッコつけてない、バカ丸出しのバカライブ。

 なんだけど、ゼップ札幌で鳴っていた電グルのサウンドは、間違いなく世界標準のズンドコ/ディスコ。音作りが丁寧なサウンドシステムもあってか、爆音でズンズンどこどこ鳴っていても、耳が不快に感じない。「もっと踊りたい!」「もっと爆音にしてくれ!」と“ダンシング餓鬼道”に無理やり引きずり込まされたような、悪夢のような最高のライブだった。「このままずっと踊ってたい。このライブが終わらなければいいのに」・・・と思ったもんだ。

 そんなライブを体験したせいもあってニューアルバム「人間と動物」は、もう冷静に判断できない/冷静に聴けない1枚になってしまった。

もはや冷静に聴けない1枚

 札幌のライブ冒頭、点滴付きの台車に座った卓球と、その台車を押してステージを練り歩くピエール瀧。2人の手にはマイク。気づけば「The Big Shirts」を熱唱している。口元だけ見れば歌謡ショー。全体を見れば、ジョージ・クリントンあたりがやりそうな、バカバカしさ丸出し、モロ出しの1曲目。札幌のライブもニューアルバムも、このアルバムから始まったんだ。始まるんだ。

 個人的には「The Big Shirts」のファンキーなギターのカッティングと、ゴリッゴリのベースラインがたまりません。歌詞は相変わらず意味不明。曲の真ん中あたりで鳴る安っぽいシンセ音(1980年代後半あたりに鳴りがちな感じの音)に、潔さも感じる。新しいんだけど古い。次に「Missing Beatz」~「Shameful」になだれ込む。その流れ方もカッコいい。

 オールドスクールのパーツで21世紀に悪ふざけ「P」、サマー・イズ・オーバー感が漂うメロディーがたまらん「Prof, Radio」と「Upside Down」、Kraftwerk「Man Machine」あたりの重厚なシンセ音をパクった今に伝える「Oyster」。そんなおっさん文化祭のラストは、まさかのモンキーズカバー!原曲を20代に聴かしても「モンキーズって誰?」って言われそうな21世紀に、あえてこの選曲・・・。

 渋い。
 
 本当に渋い1枚だ。

 ただ、CD版はドラム系の音(特にスネアの鳴りと、シンバルの響き)が控え目。

 3月にリリースされたアナログ盤のほうが、逆にガッツり鳴っているように感じる。個人的にはライブで感じたあの“ズンドコ餓鬼道感”は、アナログ盤で炸裂しているんじゃないか。

 単なる錯覚かもしれないが。幻聴かもしれないが。

 いずれにしても、ライブを体験している/いないで、受け止め方が大幅に変わりそうだ。もしライブを見ずに聴いたとしたら、「ふーん」って感じで、あっさりと耳を通過してしまいかねない。それほどの渋さをたたえている。

 2002年8月31日(土曜日)、渋谷アックスで日本のグループサウンズの至宝、ザ・ハプニングス・フォーの再結成ライブ「ハプニング・ア・ゴーゴー」が行われました。出演はザ・ハプニングスフォー、クレイジー・ケン・バンド、「平成サイケ歌謡の女王」渚ようこ、名古屋のザ・シロップ、ぽかすかじゃんの面々。そのときのレポートです。

 スタイリッシュな和グルーヴのザ・シロップ、演奏スキルが意外と高く笑わされた「ぽかすかじゃん」に続き、クレイジー・ケン・バンドがステージに立つ。1曲目は「グランツーリスモ」。イス席じゃなかったら絶対踊ってた(会場はイス席だったのだ!)。そして「しょわ、しょわ、しょわ、昭和~♪」な「昭和レジデンス」などを披露した後、横山剣氏が渚ようこを呼ぶ。

 渚ようこのボーカルに、CKBによる演奏で名曲「ニュートーキョー」を歌う。さらに横山剣・渚ようこによるデュエットで「新宿そだち」も歌い上げた。かっこよかった。再びCKB単体に戻り、「おんな、おんな、いいおんなー!」な「おんな」も熱唱。ラストは「あるレーサーの死」で締めくくったCKB。最後はテレビをくるくる回転させる台をメンバーがおもむろに取り出し、その上に横山剣氏が乗り、くるくる回転するという「噂の芸」も披露。その直後、CKBのメンバー全員はビートルズの武道館ライブのときの前座ドリフターズのように「逃げろ~」と退散。

 そして、いよいよザ・ハプニングス・フォーだ!「Ladys and Gentleman・・・」の甘やかなトメ北川のボーカルで始まる「ハプニングステーマ」でスタート。にくい演出。嬉しくなる一瞬。続いて高速ボサノバ歌謡の名曲「何故」。渋谷からほどちかい、代官山とか青山とか似合う傑作チューンだ。お次はハプニングス・フォーだからこそできたクラシカルポップ「あなたが欲しい」。「これぞハプ4!」という荘重な雰囲気の曲が、オリジナルメンバーで、しかもナマで聴けるなんて!瞳孔は開きっぱなしだった。

 さらに「エリナーリグビー」などアルバム「クラシカルエレガンス」収録曲も披露。すると渚ようこ、横山剣の両名が再登場。ハプニングス・フォーのメンバーとともに「アリゲーターブガルー」を歌った。確かこのとき、渚ようこは恐ろしくでかいダイヤモンドの指輪はめていた。狂っている!さらに「ゴーゴーガール軍団」も現われるなど、渋谷の最初の夜は大いに盛り上がった。

 ただ、東京でのハプ4“復活”ライブはこれだけでは終わらなかった。続いて、渋谷アックスの反対方向、青山「青い部屋」でアフターセッション(公開打ち上げパーティ)も敢行された。

マジカル・ハプニングス・パーティー!

 スタートは午後11時30分。GSや1960年代のポップスに造詣の深い町井ハジメさんがDJを担当し、カーナビーツのB面曲など、渋い楽曲で会場の雰囲気を作る。すると、トメ北川がカンツオーネ~イタリア、スパニッシュな雰囲気の弾き語りを、おもむろにはじめた。

 「なんて大人な雰囲気!」かっこいい。「2度目の夜」は、こんな具合にじわじわ始まった。

 数曲弾き語りをしたらハプニングス・フォーのメンバーを呼んで、「君の瞳を見つめて」「何故」「エリーナリグビー」などを演奏。中盤にジャムセッションのような形になり、ワインを飲んだり談笑したりといった具合に、リラックスした雰囲気。クニさんもかなりノりながらピアノを弾いている。途中、渚ようこが再々登場し「アリゲーターブガルー」をシャウトしまくりの荒削り歌唱で歌い上げた。クレイジーだ。渋谷の夜はどんどん狂い始めた。

 ジャムセッション状態が続いた。トメ北川は酒が入ったこともあるのか、歌声がアックスのときよりも滑らかになってて、ほんとうに若い頃と同じ様態と思しき歌声。あの不思議で独特な声は健在だった。ジャムセッション状態はまだまだ続いた。数回「あなたが欲しい」をやったり「君の瞳を見つめて」をやったり、「あなたの側で」もやったはずだ。明らかにアックスの時より調子が良さそうだったのがほほえましかった。

 そうしているうちに時間は深夜3時を過ぎていた。

 今度はサミー前田さんによるDJタイム。これがすさまじいというか、不思議な曲がばかりが飛び出すDJだった。GS~ニューロックが中心。中でも羅生門の「日本国憲法」、日本屈指の謎盤「薔薇門」を初めて知ったのは、この日、この場所でだった。するとクニさんがサミーさんのレコードに興味を示し、「いやあ、こんなレコード、よく持ってるねえ」。驚きと感心の入り混じった表情を浮かべていた。

 セッション終了後、思い切ってクニさんに声をかけた。これが、クニさんと生まれて初めて話す瞬間だった。「帯広から来たんです」と私が話すと、クニさんは「え?」と驚きの表情。「じゃあこんどは北海道できっと会えるね」。クニさんは笑顔で話してくれた。良い夜だった。

 フジ2日目も、テント内の暑さで目が覚めた。

 夜はシュラフをまくらにして、何もかけずに眠るのが寒冷地仕様の純粋道産子にはちょうどいい。

 なんて思ってテントを出たら、となりのテントのEさんが、テントの外で寝ている。気持ちよさそうだ。というより、苦戦を強いられて命からがら帰宅して、そのまま外で寝てしまったという不本意。軽度の野戦病院みたいな状態だ。

 Eさんの目を覚まさせないように、そっと携帯ガスバーナーでお湯をわかし、カップ入りシチューを作り、有楽町駅前のコンビニで買った食パン(6枚入り)を食う。うまい。目の前には、緑のグラデーションが広がる山々。太陽光線が本気を出し始めるちょっと前。ウグイスはホーホケキョと鳴き、名前の知らない虫たちが、その存在を証明するかのような心地よいノイズを奏でる。

 山の朝はいいなぁ。

 なんて思ってたら、Eさんが起床。昔のパソコンみたいに、起動時間にものすごく時間がかかるみたい。断片化されたデータをひとつの場所に集めて、なんとか「今日の俺」をローディングしてる感じ。

 「けさ、最後までオールナイトフジを見てたんですよ」とEさん。彼は東京出身。私と同じ1981年生まれ。なんとなく自己紹介して、「今日の俺」がだいぶでき上がったところで、パンを差し出す。なんも焼いてないし、味付けしてない、ただ単なる、純然たる食パン。でもこれがうまいんだなぁ。Eさんも「うわ!食パン」と驚きながらも「うまい」。

 午前9時過ぎ。ザックに取り付けたモンベルの温度計によると、テント内では45度を差していた。とにかく日陰を・・・と、スキー場の斜面そのまんまのキャンプサイトを見渡すと、苗場プリンスに向かって左手、トイレ/給水エリア付近に、日陰がある。

 向かってみると、何人かが涼んでる。気になったのが色白のドイツ人風男子2人。彼らはなぜか、新聞(それもドイツ語っぽい)を読んでくつろいでる。肌の色の白さといい、新聞といい、男子2人といい、なんかこう、いろいろ考えさせられる2人。そんな彼らとともに、木陰で涼む。

 木陰はえらい。木はえらい。クーラーがなくても、日差しが防げるだけこんなにも涼しい!そんなことに気づいたとき、少し野生化している自分に気づいた。札幌を出て3日目。まったく風呂にも入っていなかったし。

 香水でキタナイモノをごまかして、コーヒーを淹れたら午前10時。

 さ、2日目の会場に行こう!

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■7月28日(土曜)
・SPECIAL OTHERS(グリーンステージ=序盤の2曲ほど)
・SEUN KUTI & EGYPT 80(グリーンステージ怒涛の2時間!)
・MONO with The Holy Ground Orchestra(ホワイトステージ)
・ONDA VAGA(オレンジコート=気になったので1曲ほど)
・麗蘭(フィールド・オブ・ヘブン)
・ROVO(ホワイトステージ)
・ELVIN BISHOP(フィールド・オブ・ヘブン)
・STEVE KIMOCK(フィールド・オブ・ヘブン=スタート~2曲ほど)

SPECIAL OTHERS

 積極的に見たいものがあるわけではないけど、フジという環境は、もしかしたら良いライブハウスみたいなものなのかと、この雑文を書いている2012年8月10日、ライジングサンに向かう直前に思い出している。2009年のRSR。この初日に見たのがSPECIAL OTHERSだった。「悪くないな」と思った程度だったが、緑が驚くほど多いフジの会場。しかもグリーステージの広大な環境だと、印象がぜんぜん違う。かぜのようなギターの音。軽やかなリフ。ちょっとグレイトフル・デッドっぽい感じ。

気持ちいい!

 ほらほら、2日目からテンションがあがる。でもま、スペアザは本題じゃない。とりあえず2曲くらい聴いてホワイトステージ方面に向かうと、アーティストグッズの販売コーナーがスッカスカ。ここでぶっ飛んだ。財政構造が破綻した。RadioheadのTシャツ3枚、6月のMDTで買いそびれたROVO、昨日のステージで大感動したブルーハーブ、さらにSEUN KUTIのものなど、合計2万円以上を大人買い。クレジットカードが使えたのが、大変ありがたかった。

 爆笑したのがSEUN KUTIのTシャツ購入システム。なぜか売り場係員が「好きなサイズを選んでください」というもんだから、てっきりS~Lで選ぶのかと思いきや、係員はおもむろにダンボールを差し出し「この中から好きなのを選んでください」。

 どひゃー。こんなTシャツの売り方、初めて見たぞ(笑)。箱の中からだいたい自分のサイズに合いそうなのを選ぶ。ちょっと楽しかった。アバウトといえばアバウト。でもここは、おおらかとしたい。アフリカのおおらかさ。たぶん、S~Lと各サイズあるんだろうけど、日本に輸送するまでにぐだぐだになって、いっしょくたになった・・・みたいな。

SEUN KUTI & EGYPT 80

 フジ2日目。この日の、自分にとってのメインアクトはSEUN KUTI & EGYPT 80。キーボード、ホーンセクション(トランペット、テナー、バリトン)、ドラム、パーカッションX2、ベース、ギターX2、女声コーラス&ダンスX2、そしてセウン・クティ(ボーカル、アルト)という、相変わらずの超大所帯。そして彼彼女らがこしらえる猛烈なグルーブ感の「鮮度」は、3年前とぜんぜん変わってなかった。

 その3年前の2009年。私がフジ初参戦時に、彼らの名前を見て「これはもしかして」と気になったバンド。ところ天国でオフィシャルガイドを買い、彼らのページを開くと「フェラ・クティの実子(男)で・・・」とある。何の前知識も無く、ただ名前だけがピンときた。それがSEUNとの最初の出会いだった。

 「どんなものだろう」。2012年と同じグリーンステージで、彼らの「初フジロック」のパフォーマンスが始まった。すさまじいアフリカンビートのポリリズムと、ある種の刺激臭すら放ってるんじゃないかと思うほど「激甘」なフトコロ広いメロディが、縦横無尽に鳴りまくった。心底驚いた。

 「こんなに楽しいビートって、あるんだ!」と。

 その3年前は、グリーンステージ+オレンジコートの2ステージだったが、今年はグリーンステージのみの2時間1本勝負!これで興奮しないわけがない。

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 シンプルなリズムどうしがシンプルに重なり合うだけなのに、なんでこんなに熱いビートになるんだろう!ブルースの原型のような“原始力ブルージー”を宿したギターは今年も絶好調。コリコリとした軟骨みたいな、独特のコクを含みながら、執拗に、これでもか、これでもかと、ひたすらリフを刻む。そのリフとリフの間を、乾いた黒いでっかいビートが、大型動物のような存在感を際立たせながら、のっしのっしと大地を突き進む。そしてSEUNの情熱的なサックスが、空を裂くように鳴り響く。熱い。カッコイイ!その熱さをホーンセクション陣がさらに過熱し、キュートなコーラスとダンスが彩りを添える。

 それは狂気的というか、もう狂喜的な音の饗宴だ。聴き続けると、快/不快を判断する五感の整理系が、だんだんバカになっていく。昔付き合っていた女のことを、頼んでもいないのに思い出させたりする。こんな音楽体験、いままでほとんど無かった。だんだん頭がおかしくなってた。ただ単に「楽しい!」と、快だけを判断するスイッチだけが入りっぱなしの状態。

 まさに「歓喜のグルーブ」。ベートーヴェンの「交響曲第9番」と同じベクトルがアフリカにもあって、その要素がヨーロッパ世界とはぜんぜん違う進み方をしたら、SEUN KUTIに通じるんじゃないか。などと、もう頭の中がワケワカラナサスギ状態だった。

 そのSEUN。ライブ中「俺たちがやっているのはアフロジャズなんかじゃない。アフリカの音楽だ!」と言っていた。その通りだ。アメリカ本土でアフリカを想像するような、妄想のジャズなんかじゃない。彼らはもっと赤道に近い音を、タフに聴かせる。それはすごくフィジカルで、ステージが進むにつれフイジカルさが増していく。気づけば、感情だの脳みそだのとうクソみたいな自意識のディフェンスをボコスカぶん殴ってきれいさっぱり壊されている。ヘヴィパンチを食らわすボクシングのようなパフォーマンス。ただただ、ただただ、グリーンステージのモッシュピット最前列で、ワーキャー歓喜しながら、猛烈なアフログルーブの饗宴を聴きまくってた。阿波踊りだった。踊る阿呆だった。私は。

 歓喜のグルーブ。強烈なビート。腰と脳に来る“原始力”。

 くぅぅぅうううう!たまんねぇ!電化マイルスを聴くときと同じ「くーたまらん!」が、怒涛のように押し寄せる。

 肌の色が白かろうが黒かろうが黄色かろうが、なんかこう、人間たれば当然に感受するはずの普遍的なグルーブ、ダンスミュージックの鋳型。心理学者ユング言うところの集合的無意識のツボを、執拗なくらい押しまくる。最高なバンド。1曲10分くらいありそうな長尺セッションあり、2011年のアルバム「From Africa with Fury: Rise」からの曲もあり、2012年11月の日本ツアーの告知もあり。あっという間に2時間のステージが過ぎ去っていった。

 アンコールでは、リズムをバッキバキに刻む高速アフロビート。それは大型動物が猛スピードで疾走するような、強烈なアフロビートだった。楽しかった。最高に楽しかった。Thankyou!SEUN!またフジで会いたい!

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MONO with The Holy Ground Orchestra

 SEUN KUTI後は、大ボスと闘い、限りなく残りHPがゼロに近い状態だった。体がきしみはじめていた。とにかくホワイトステージ目指して歩いてた。

 グリーンステージ~ホワイトステージ間には緑の森。杉や白樺などの樹木がもりもり。それぞれの葉っぱは、緑と青の間で、乱反射しまくりながら天然のグラデーションを見せる。夏がビカビカ発光している。葉っぱたちが発光すればするほど、木の下に大きな影ができる。昼間の木々たちは、やさしい。そんな木と木の間から、電気的に増幅された、大きな、ひたすら大きなギュォォォォォオオオオオオオオという反復的な持続音が聴こえてきた。

 その音は、なんか聴いたことがある!

 あ!monoだ!

 叙情的ってどんな感じだよ。叙情的を説明しろといわれたら難しい。とにかくこう、別れたくない人と別れる気持ち。愛別離苦。哀切という感情を音で表現すると、こうなるんじゃねぇか。という音を、monoはバンド+オーケストラの編成で表現している。と言えばいいのだろうか。

 私の拙い言語能力では、あの「大きな音」を、うまく表現できない。宇宙的といえば簡単だけど、もっとこう、産みの苦しみを乗り越えるような、飛行機が離着陸するときの衝撃のような、宇宙船が大気圏を突入するときの摩擦力のような音。少し怖いけど、なんか温かい音。苗場という非常に解放的な環境の中で、天に向かって大放射するようなシューゲイジングの快音。

 どんなに言葉を重ねても、中心に行き当たらない広大な銀河みたいな大交響曲。このステージを見ることができて、本当に良かったな。うれしいなと思った。

 気がつけばスルスルと最前列のほうへ進み、前から2列目で、バンド+小編成オーケストラによるmonoの音を聴いていた。最後の一音が苗場の山に消えかかったとき、会場から大きな拍手が沸き起こった。

 次はオレンジコートへ向かい、今年やたら売り出している感のある「ONDA VAGA」を見に、オレンジコートへ。

 なるほど、現代の若者によるフォルクローレ/南米ポップスって感じですか。悪くは無いけど、うーん。自分には前日のLOS LONLY BOYSのギガバイト級のブルースロック的衝撃があったせいで、あまり感動はなかった。

 ・・・と、となりの会場から、なんか良い音が聴こえてくる。

 なんだろ。となりの会場、フィールド・オブ・ヘブン(FOH)へ。

愛情いっぱいのブルースロックを!/麗蘭

 仲井戸麗市の「麗蘭」は、ブルース/ブルースロック/R&Bへの愛情いっぱいのステージだった。「すげー気持ちいいぜぇ」と、適正な日本人ロッカーのノリでフィールドオブへブンの会場を沸かせる仲井戸麗市。彼が奏でるブルースロックは、絶品だった。アニマルズ「ブーン・ブーン」の日本語カバーが飛び出したときは、うれしかったなぁ。

 麗蘭の後に、同じ会場に出演するエルビン・ビショップに、仲井戸麗市は最大級のリスペクトを送り続けた。あこがれのブルースマン(エルビン・ビショップ)のオープニングアクトを務めることができて、うれしくてたまらない!(いや、オープニングアクトじゃないんだけどね)そんなワクワク感が、大人の事情抜きの音楽への愛情が、あのとき、あのフィールドオブへブンには満ちていたんじゃなかしら。

 観客も自然とレスポンスを送る。自然に、ブルースロックで演奏者と観客が溶け合うステージ。

 「毎月ここで(フィールドオブへブンで)ライブやりたいぜ!」と、ギターを手に叫んだ仲井戸麗市。オリジナルのアメリカンテイスト溢れる良曲「ガラガラヘビ」なんかも披露し、初めて見た麗蘭にそのまま痺れた。この直後にROVOがホワイトステージで演奏するスケジュールだった。「ROVO見ようか、麗蘭見続けようか」。激しく悩んだ。ROVOの日比谷MDT(2012年6月17日)を脳内で再生しながら、進行し続ける麗蘭のステージを比べていた。カツ丼にするかカツカレーにするか。そんなレベルの悩みじゃない。二度とこない一瞬のステージの、どちらに賭けるか。大げさだけど、人生の投資だ。それくらい悩んだ。でも悩み続ければ、MDTも麗蘭もかすんでいく。

 「これじゃいかん!」

 大見得を切って、麗蘭のステージを最後まで見ることにした。そして、何度となくエルビンへの敬愛を込めていた仲井戸麗市の言葉を信じて、エルビン・ビショップのステージを見ることも決断した。正解だった。もし麗蘭が出ていなかったら、エルビンへの期待も、あれほどではなかっただろうなぁ。なんて勘ぐりたくなるほどの正しさを、仲井戸麗市は教えてくれた。ような気がする。

大地から天空へあるいはD.D.E/ROVO

 麗蘭のステージが終わったら、ただちにホワイトステージへ。ジプシーアヴァロンのアップダウンがもどかしい。アヴァロンの坂を下ると、ホワイトステージの様子が手に取るように分かる。やっぱりすごい人。下りながら「Compass」のスパニッシュ系の情緒あふれるメロディアスな音に、早くも脳みそがやられ始める。

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 少しずつ前へ進んで、遠くに勝井祐二、その奥に芳垣さんのドラム。かろうじてメンバーが見える位置で、続く「Sino Dub」。山本精一のギターリフが重なるたびに、苗場の緑が、空が、ほこりっぽい地面が、なんでかキラキラ輝き始める感じ。今年のMDTでも大感激したけど、やっぱりROVOのライブは最高だ。同じ曲なのに、見るたびに「やっぱり今日のライブのほうがいいなぁ」と体が反応する。展開はそんなに複雑ではないし、最近のROVOにしては大胆と思えるほど開放的な、牧歌的とも思えるこの曲。でもやっぱり「今日のライブのほうがいいなぁ」。

 そしてラストはやっぱり「D.D.E」。シンセのリフから、メンバー全員で最終決戦に突撃するような大団円。あんまり音楽と社会性を結びつけるのは本望じゃないけれど、いろいろ「生き辛い」21世紀の日本。でもこの曲を2011年、震災からわずか2ヵ月後の日比谷野音MDTで、このタフな楽曲を聴いたとき「あ、俺、いま、生きてるんだ!」と、当たり前の事実に気づかされた。そんなバイタリティに富んだというか、とにかく熱い曲。

 せつなくて感傷的な勝井祐二のエレキ・ヴァイオリンの音色。良い事も悪いことも、ぜんぶひっくるめて猪突猛進していくような、ある意味無慈悲な、それでいて慈悲深いツインドラムのビート。ROVOがつむぎだすグルーヴは、痛快なほどオプティミスティックだ。「D.D.E」中盤の記憶を巻き戻すような、どっか遠くへワープするようなブリッジから先は、やばすぎた。毛穴が開いた。瞳孔開いた。苗場が飛んだ。遠くへ飛んだ。飛ばされた。

ブルースマンは「B級の日本語」を/エルビン・ビショップ

 ボトルネックのスライド主体で、コクのあるブルースロックの大多発地帯。エルビン・ビショップが奏でるギターの音は、ブルースへの扉をゆっくり開けて、気づいたら誰もをブルースの虜にしてしまう。そんな魅力が炸裂する、稀有なステージだった。

 名前だけなんとなく知っていたエルビン。でも彼がポール・バターフィールドとブルースバンドを組み、王道ともいえるアメリカンブルースロックの道に名を残す偉人だということは、少しも知らなかった。そんな肩書きなんかどうでもいい。ただブルースとお姉ちゃんが大好きなギタリストが、そのまま年を取り、2012年のフジロックに駆けつけた・・・。と、エルビンのステージに敷居の高さ、とかくありがちなブルースへのバリアは、全くといっていいほどなかった。

 とにかく楽しい。ギターを弾けば絶品。歌えば渋い。それでいて「ワタシノニホンゴハBキューデス!」「ツリバカニッシ!」。メンバー紹介でベーシストを紹介するときは「ベースソウシャ!」と、日本語を話すのがうれしくてたまらないエルビン。かわいかった。でもでも、どっこいスライドを使ったギターの音色はセクシーで、アメリカの良いにおいがする。ブルースの伝道師みたいなフレーズが、これでもか!これでもか!とテンコモリ。このギャップにも、クラクラっときた。

 トロンボーンと女声ベーシスト(良い音出してました)の存在感も意外と大きかったが、やはりエルビンだ。演奏中に勢いあまってボトルネックが脱落し、ステージ外に落下してスタッフが拾いに駆けつけるという、キュートすぎる場面も。その後、ステージを降りて、まさかの客席の中にギターを持って突っ込んでいくというパフォーマンスあり、観客の中から「これだ!」とエルビンが見つけた女性(かわいい女性)を、エルビンがステージまで引っ張ってて、ギターを弾かせるというギターウルフ並みのアクションも飛び出し、会場はまさかの展開に唖然→大興奮。最高のステージだった。

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 エルビンが終わったとき、時間は午後7時を過ぎていた。フィールド・オブ・ヘブン内のフードコーナーで、チョリソードッグ、フライドポテトなんかを所望して、次はSteve Kimock。序盤はおお、ジェリー・ガルシアが奏でるような、ハッピーなカントリー風味のギターを聴かせてくれる。気持ちいい。けどその気持ちよさが次第に睡魔へと置き換わっていく。

 今日はSEUN KUTI(13時~15時)、MONO with The Holly Gohst Orchestra(15時~16時)、麗蘭(16時~17時)、ROVO(17時~18時前)、エルビン・ビショップ(18時~19時)と、アフロビート、大宇宙サウンド、最強の日本語ブルース、最強のトランスロック、幸せいっぱいアメリカンブルースをスポンジのように浴びまくった。Steve Kimockのステージはこのあと3時間にも及んだらしいが、今日は撤収。ノエル・ギャラガーで客が寄せ集められていることを予測し、キャンプサイトへ。無料のシャワーは案の定、すぐに浴びることができた。

 汗でベタベタした体を、野戦状態のシャワーコーナーで大雑把に清めた。

 すると苗場の夜風が、より一層涼しく感じた。

 2011年8月12日。今日から石狩湾で、毎年恒例の「Rising Sun Rock Festival」が開催される。DJ KRUSH、にせんねんもんだい、Okamoto’s、Y.Sunahara(砂原良徳)を見に、2年ぶりに行ってこよう

・・・と思っていたそんな朝、知人のブログを見て驚いた。

 ジョー山中が、亡くなったという。

 びっくりした。

 それと同時に、

 がっくりした。

 だってちょうど2年前の夏、RSRにジョー山中が、Flower Travellin’ Bandで出演したんだもの。石間秀樹の妖艶でぶっ飛んだ音色を奏でるイイ楽器・ギターラに載せ、名曲「SATORI」では驚異的なシャウトを聴かせてくれたし、元ハプニングス・フォーのシノ篠原のハモンドもいい味出してたし。

 開演10分くらい前は会場のアーステントが奇跡的にスッカスカで、最前列(石間秀樹の目の前)で見ることができた。でも終演直後、会場を振り返ると客が大勢。イイもん見たなと、日本のロック後追い者(俺)は感動したものです。

 とにかく、ジョー山中は日本のロックにとって、なくてはならない存在だ。

 FTBがいたからこそ、日本語でロックするべきか、英語でロックするべきか。なんてメロディーに歌を載せるギミックの考案がなされたわけだし。そこで興味深いのが、彼が歌う日本語のロックもイイということ。

 それはクニ河内、石間秀樹らと録音した「切狂言」。

 「セリフはうまく言えるかい?」

 シェークスピアの世界劇場(生きるものは皆、何かを演じている)をなぞるような、不思議な作品。ここに収録されている「タイム・マシーン」、「おまえの世界へ 」、「恋愛墓地」の3曲は、どう考えてもジョー山中以外、歌えない曲だと思う。彼だから歌えた、あのハイトーンボイジングがあったからこそ、オルガンとギターのノイズに埋もれることなく、「ROCK」できたのだろう。6~7年ほど前、この切狂言の復活セッションを見たとき、ジョー山中の声量とシャウトに、度肝を抜かれた記憶がある。そのとき、そんなことを感じたもんです。

 だからといって観客をロックの彼岸へ突き放すだけではなく、老若男女の聴き手の耳をきちんとソフトランディングさせるエンターテイナーとしての才覚も、確実に持ち合わせていたジョー山中。ライブ終盤には「スタンド・バイ・ミー」を歌い、マイク片手に会場を歩き回り、観客とコールアンドレスポンス。「なんか恥ずかしいな」と思ったけど、今思えばあれは、ジョーのフトコロの広さとサービス精神だったんだろうな。

 もし、ジョー山中がいなかったらと妄想してみる。

 (1)FTBはいなかった
 (2)切狂言もなかった
 (3)人間の証明のテーマもなかった

 それはつまり、日本のロックがもっとつまんない状態だった、ということ。

 彼がいたから、かつての日本のロックはとてつもなくおもしろかった。

 だからこそ言いたい。

 ジョー、ありがとう!

 俺はギターも弾けないしジョーのようにシャウトもできないし声量も無いけれど、これからもFTB、切狂言、そのほか彼の録音された歌声を、聴き続けようと思う。

 ジョー。今日の札幌の空は、晴れているよ!

 これから、石狩湾に行ってくるぜ。

 帯広が誇る鋭角パンクバンド黄金クリムゾン。俺が彼らのライブを初めて見たのは、2010年11月。遠藤ミチロウのオープニングアクトで出演したときだった。尺はわずか20分程度だったと思う。正直に言おう。客は思ったよりも少なかった。にもかかわらず、極低温のライブハウスを四の五の言わずに、1・2・3・4のカウントで、一気に最大戦速まで加速させるハイスピードで不審船を撃墜するイージス艦みたいな、タイトなロックンロールをぶちまけた。そして炎上した。俺のココロが。完全に。

 不審船(俺)はステージの大海原を爆走するイージス艦の全方位レーダーに完全に補足され、逃げ場を失っていた。逃げようにも、時速8万ノットの超快速で疾駆するイージス艦が追いかけてくる。俺にジャミング装置はない。光学迷彩なんてもちろんない。1981年製の、肉と骨でできたヤワな船体だ。だから気がついたときには、ミサイルみたいなギターとベース、さらにドラムという名のバルカン砲による全開フルスロットルの完璧な爆撃を受け、俺の心は完全に打ちのめされたていた。からっぽだ。からっぽの世界だった。そのからっぽの世界になった脳みそにダイレクト注入するかのごとく、極鋭角のスルドすぎるパンクが俺のカラダを蝕んでいった。

 それは快感だった。やったことはもちろんないけれど、きっと高純度のドラッグのに近い効き目だったのではないか。

 そして遠藤ミチロウ。ギター1本で、かくまでも人間の怨嗟や憎悪を歌うことができるのかと、それはそれは恐れ入るパフォーマンスだった。鬱屈しながら、しかし突き抜ける。三上寛と入り口は異なるが、出口は一緒。そんな不気味さに驚きつつ、アンコールがはじまった。なんと、黄金クリムゾンの3人とスターリンのカバーを絶唱。

 「毒殺!毒殺!毒殺!」

 それはキレイで安心して着地できるブルーハーツ(俺は大嫌いだ)的なOSとは180度真逆にある、殺気と怒気が束になって襲い掛かってくる、鋭角にさらに鋭角の磨きがかかった切れ味の鋭い、鋭角の鋭角なパンクだった。

 仏像でいえば不動明王。

 ファイナルファンタジーならバハムート。

 マイルス・デイヴィスのアルバムで言えば「ダーク・メイガス」。

 憤怒の面構えでメガフレアを繰り出し、聴き手(俺)のクソみたいな日常と煩悩をマッハで焼失させる。これは菩薩だ。みうらじゅん的に言えば、ロックンロールによる救済だ。

 安易でヤワでデリケートでクソみたいな俺のハートは、不動明王に完全に燃やされた。

 「こんなバンドが帯広におったんや!」

 俺は降参して、黄金クリムゾンのファンになった。

 そして今、俺の脳みそは黄金クリムゾンに占領されている。

 なんかこう、シャカイジンとして生きているということは仕事=金、タイム=マネーなカラクリで生きているわけでして、逆に言えば仕事しなければ生きていけない/カネがない=レコードが買えないwithライブにも行けない・・・

 わけなんでありますな。

 そんな今日この頃、レコードを買う、あるいはライブに行くための資金を集める、ために俺は働いているわけで、気がつけばちっと更新できずに1月が過ぎようとしている。

 光陰矢のごとし。

 先人は、うまい形容詞を作ったもんだ。ビューチフォー。

 そんな今日この頃。でもCDはバシバシ買ってます。

 最近の高額商品ではヴェルベット・アンダーグラウンドの通称「黒バナナ」こと、1stアルバムのアセテート音源、2ndアルバムのMONO音源などが収録されている音源を買ってしまいました。MONOで聴く「SISTER RAY」はヤバイ。ルー・リードとジョン・ケイルの才覚が、掛け値なしの真っ向勝負を挑んだドキュメンタリー要素が、心なしか強化されている気がします。んが、正規音源のステレオ盤を再生すると「こっちもいいなー」。いったいどっちがいいんだ!わけがわらなくなるモノステの境界線。その辺縁を行ったりきたりするヴェルベッツ。かっこいいぜ。

 続いて布谷文夫の「ロストブルースデイズ」。なんとなく「2人のブルース」のいろんなオトを聴きたくなったので、布谷文夫~DEWの音源で格安で捕獲できるものをできるだけ買いあさっている1月です。それにしても「立ち眩みライブ」が高価で取引されているなんて、ちょっと信じられない。どうでもいいけど「2人のブルース」のベストアクトは、今のところ「幻野ライブ」だと思っております。

 その幻野ライブをひさびさに聴いて、郡山ワンステップフェスティバルのCDが気になり始めました。その昔、某雑誌でディスクリビューを書かせてもらっていたとき、ついつい買い逃してしまった昭和日本ロック史の準重要アイテム的ブツだと、数年目にして気づいたのだった。乗り遅れまくれの俺。既に購入不能状態ながら、奇跡的に某オークションで偶然見つけて即BUY。これで四人囃子や外道を、ちゃんと聴けるぞ。わーい。

 このほか、CDがあるはずなのに自宅でディスクが遭難している鉄腕アトムのトリビュート的アルバム「Electric-Brain Featuring Astroboy」も中古安価でゲット。ジャンルはいきなりテクノ~エレクトロニカ路線にシフトしますが、これに収録されてるROVOの「ASTROVO」が泣けます。

 原子力で動くマシーン=アトムというロボットに、喜怒哀楽の微妙な感性を与えるような、そんな感性を先天的に抱いているような。ツインドラムの駆動力とベースのクールなグルーヴ感(この曲で「ROVOのベースはかっこいい!」と気づきました)、そして勝井祐二の天衣無縫なエレキバイオリンの音色と残響。天馬博士の理学を超えたピースフル=原子力の純平和利用、みたいなストレンジでスウィートな優しさを感じさせる音塊が何年かぶりにスピーカーから飛び出して、俺のハートもピースフル。ところで気持ちを落ち着かせて音を聴いてみると、奇才・山本精一のギターがぜんぜん聴こえないのが気になった。

 手塚るみ子さんって、侮れない存在だと思います。父の手塚治虫の作品と、エレクトリックミュージックとを結びつけた稀有な存在。この「Electric-Brain Featuring Astroboy」だけでなく、スティーブ・ヒレッジ率いるSYSTEM 7で「PHONIEX」(あるいはHINOTORI)のコラボを実現させて、しかも去年のFUJI ROCK FESTIVALで「HINOTORI」をナマで聴けたんだもん。日本人でよかったーと思う今日この頃です。

 この駄文は会社の飲み会の帰りにドバーっと書きました。

 2009年8月、ライジングサン@石狩湾新港のアーステントで6年ぶりにギターウルフのライブを見て以来、彼らがつむぎだす爆音ミラクルロックンロールに再び痺れた。スピーカーから電気、いや雷みたいな爆音ノイズが、ピーピーガーガー鳴り響くアーステント。それからというもの、完全に狼ロックのとりことなった俺は9月のロッケンローサミット@渋谷、そして12月6日のベッシーホール@札幌と、ギターウルフを追い続けている。

 こうして地上最強のロックンロールアイドルとしてのギターウルフを”再発見”した2009年を締めくくるかのように、ギターウルフは5曲入り15分のミニアルバム「ジェット サティスファクション」をリリース。仕事と私用でドタバタしてた年末をやりすごし、2010年1月3日、俺は札幌のタワーレコード・ピヴォ店で、特典シールのおまけ付きを買った。2010年、最初の1枚。2009年のライブを収めたダイジェストDVD付き。

 というわけで、股関節の手術をひかえているセイジのギターノイズと高校生アクションなシャウトが真空パックされたミニアルバムの中身を、事細かに書いていくぜ!

ギターウルフ ジェットサティスファクション

ジェットサティスファクション(初回生産限定盤)(DVD付)

ギターウルフ「ジェット サティスファクション」
01.ジェット サティスファクション
02.ビルディング Z
03.エジプトロック
04.ワイルドレストラン
05.デビルクチビル

<特典DVD>
・環七フィーバー
・オールナイトでぶっ飛ばせ
・ジェット13
・インベーダーエース
・ワイルド・ゼロ
・ロックンロールエチケット
(Live@新代田FEVER=2009.03.03)

・星空ジェット
・ジェットジェネレーション
・オールナイトでぶっ飛ばせ
・ケンカロック
(Live@Rising Sun Rock Festival 2009 in EZO=2009.08.14)

 まずは1曲目、「ジェットサティスファクション」。バイク、皮ジャン、ロッケンロー!ウルフロックの必須アイテムをそろえて、お前がいれば最高!ファイアー!単語だけを並べると、あんまりピンとこないけれど、セイジの電撃ギターが鳴り捲れば、とたんにロックンロールする。スゲー。この感じは、電気ビートに載せてクールなグルーヴを生み出すクラフトワークとおんなじくらい、シュールでかっこいいぞ。

 続いて「ビルディング Z」。朝日を浴びて、次から次へとビルディングが空を飛ぶ!意味わかんない歌詞!しかもなんでZ!意味を求めることに意味がないのかどうか、足りない脳みそで考えてたら、今度はエジプト!ファラオあり、ピラミッドあり、スフィンクスあり。クレオパトラもあるでよ。もしかすると、ギターウルフにとって火星もエジプトも同じようなものなのではないか。というひらめきが訪れる1曲。夏の暑いに日に、ビールをガンガン飲みながら爆音で聴いてみたい。

 そして「ワイルドレストラン」。ギターウルフの注文は、宮沢賢治よりも少ない・・・のか。「食べたいのは君のからだ」とストレートに歌う4曲目は、フライパンの上で熱くなってるらしい。わけわかんなーい。が、3ピースのウルフロックンロールが言葉を強力に結びつくと、予定調和の文体なんてハナクソみたいに消し飛ぶんだ。「島根スリム」と歌ったギターウルフは、日本語でロックンロールする可能性を、限りなく広げている・・・のだろうか。

 最後の「デビルクチビル」。この曲、1~2歳児に聴かせて、一緒に歌ってみたい。きっといけると思う。そういえば2009年12月6日の札幌ベッシーホールでは、この曲を披露した後に「UFOロマンティクス」をやってくれた。イイ思い出です。「高校生アクション」「環七フィーバー」と同じくらいギターウルフの定番曲となりそうな「ジェットサティスファクション」も最高だが、おまけのDVD が、おまけ以上の魅力があるんです。なんてたって、俺が痺れた2009年のライジングサンの映像が収められているんだから!


↑DVDのタイトル画像

 ちなみに新代田FEVERの日付、裏ジャケとインサートのクレジットでは「march 3,2009」となっているのに、DVDのオープニングキャプションでは「march 23,2009」となってます。いずれにせよ、1発目の「環七フィーバー」で一気に最高速度のミラクルロックが飛び出すんだ。ンな細かいこと、どうでもいいじゃねーか、ってUGなら言いそう。俺もその通りだと思う。

 そんな3人のウルフたちに会いに、2010年1月24日の恵比寿リッキドルームへ行こうと思っている俺でした。