2012年7月21日、札幌OYOYOで、1970年代の旧西ドイツのロックバンドCANの元メンバー、ダモ鈴木を迎えたライブがあった。
今回は、旭川と札幌の2デイズのツアーでの道内ライブ。WATCHMANという日本人ドラマーとライブを繰り広げたが、なかなか、いやかなり刺激的なライブだった。
ドラム、ダモさん、ギターの3人で「なんだかわかんないけど、なんかおもしろそうな」予感ぷんぷんのセッションが繰り広げられた。こういうセッションは別に珍しくもないんだけど、そこに独特の美意識を放つ西ドイツのロック=ジャーマンロックのエッセンスが加わると、音が恐ろしいほど豊かになる。
■ジャーマンロックの美学!
スネアよりもタムでリズムを刻み、シンバルは空気を切り裂いたり、振動させたりするような「道具」に成り果てる。そしてギターはリバーブを駆使しまくって、達筆の書道のかすれ具合が、見えない山にこだましていくような、ありえない「山の音」を聴かせる。そうそう、これこれ!これだよ!と、ジャーマンロックという名物料理を味わうような気持ちで、わたし、ニコニコ。
そしてダモさんは、なんだかポエトリーリーディングみたいな、何言ってるんだかわかんないだけど、がなったりわめいたり、つぶやいたり、周囲の楽器を注視してるんだか無視してるんだかわかんないような間合いで、パフォーマンスを進めていく。
■暑苦しい、そして熱いフロア
そのダモさんのマイペースを引き立てつつ、時に引き離しつつ、ジャズの即興よりも即興すぎるようなセッションが続いた。ライブ中盤には地元札幌のバンドのメンバーも加わり、ドラム、パーカッション、ギターX2、ベース、ダモさんという大編成で大セッションに。
エレキベースが加わると、リズムと次のリズムを連結するような一体感が生まれ、さらにパーカッションとドラムがポリリズムをつむぎだすと、フロアが熱くなった。クーラーがない暑苦しい札幌OYOYOのフロアが、余計暑くなった。
と、久しぶりに予定調和をまるで無視したような、楽しい音楽と出会えた夜だった。レコーディングされた音をライブでやるなんて、つまんねぇじゃん。だったらレコード(CD)を聴け。と、こんなことをマイルス・デイヴィスは言ったもんだが、そう。ライブって「何が起こるかわかんねぇ」スリリングさに富んでいてほしいと願う。
そのスリリングを表現できるダモさんて、やっぱタダモンじゃねぇな。
帰り道、汗でべたべたになったTシャツのまま、コンビニでカツカレーを買ったら時計は午前2時に近づこうとしていた。