おんがく、あれこれ

 2002年8月31日(土曜日)、渋谷アックスで日本のグループサウンズの至宝、ザ・ハプニングス・フォーの再結成ライブ「ハプニング・ア・ゴーゴー」が行われました。出演はザ・ハプニングスフォー、クレイジー・ケン・バンド、「平成サイケ歌謡の女王」渚ようこ、名古屋のザ・シロップ、ぽかすかじゃんの面々。そのときのレポートです。

 スタイリッシュな和グルーヴのザ・シロップ、演奏スキルが意外と高く笑わされた「ぽかすかじゃん」に続き、クレイジー・ケン・バンドがステージに立つ。1曲目は「グランツーリスモ」。イス席じゃなかったら絶対踊ってた(会場はイス席だったのだ!)。そして「しょわ、しょわ、しょわ、昭和~♪」な「昭和レジデンス」などを披露した後、横山剣氏が渚ようこを呼ぶ。

 渚ようこのボーカルに、CKBによる演奏で名曲「ニュートーキョー」を歌う。さらに横山剣・渚ようこによるデュエットで「新宿そだち」も歌い上げた。かっこよかった。再びCKB単体に戻り、「おんな、おんな、いいおんなー!」な「おんな」も熱唱。ラストは「あるレーサーの死」で締めくくったCKB。最後はテレビをくるくる回転させる台をメンバーがおもむろに取り出し、その上に横山剣氏が乗り、くるくる回転するという「噂の芸」も披露。その直後、CKBのメンバー全員はビートルズの武道館ライブのときの前座ドリフターズのように「逃げろ~」と退散。

 そして、いよいよザ・ハプニングス・フォーだ!「Ladys and Gentleman・・・」の甘やかなトメ北川のボーカルで始まる「ハプニングステーマ」でスタート。にくい演出。嬉しくなる一瞬。続いて高速ボサノバ歌謡の名曲「何故」。渋谷からほどちかい、代官山とか青山とか似合う傑作チューンだ。お次はハプニングス・フォーだからこそできたクラシカルポップ「あなたが欲しい」。「これぞハプ4!」という荘重な雰囲気の曲が、オリジナルメンバーで、しかもナマで聴けるなんて!瞳孔は開きっぱなしだった。

 さらに「エリナーリグビー」などアルバム「クラシカルエレガンス」収録曲も披露。すると渚ようこ、横山剣の両名が再登場。ハプニングス・フォーのメンバーとともに「アリゲーターブガルー」を歌った。確かこのとき、渚ようこは恐ろしくでかいダイヤモンドの指輪はめていた。狂っている!さらに「ゴーゴーガール軍団」も現われるなど、渋谷の最初の夜は大いに盛り上がった。

 ただ、東京でのハプ4“復活”ライブはこれだけでは終わらなかった。続いて、渋谷アックスの反対方向、青山「青い部屋」でアフターセッション(公開打ち上げパーティ)も敢行された。

マジカル・ハプニングス・パーティー!

 スタートは午後11時30分。GSや1960年代のポップスに造詣の深い町井ハジメさんがDJを担当し、カーナビーツのB面曲など、渋い楽曲で会場の雰囲気を作る。すると、トメ北川がカンツオーネ~イタリア、スパニッシュな雰囲気の弾き語りを、おもむろにはじめた。

 「なんて大人な雰囲気!」かっこいい。「2度目の夜」は、こんな具合にじわじわ始まった。

 数曲弾き語りをしたらハプニングス・フォーのメンバーを呼んで、「君の瞳を見つめて」「何故」「エリーナリグビー」などを演奏。中盤にジャムセッションのような形になり、ワインを飲んだり談笑したりといった具合に、リラックスした雰囲気。クニさんもかなりノりながらピアノを弾いている。途中、渚ようこが再々登場し「アリゲーターブガルー」をシャウトしまくりの荒削り歌唱で歌い上げた。クレイジーだ。渋谷の夜はどんどん狂い始めた。

 ジャムセッション状態が続いた。トメ北川は酒が入ったこともあるのか、歌声がアックスのときよりも滑らかになってて、ほんとうに若い頃と同じ様態と思しき歌声。あの不思議で独特な声は健在だった。ジャムセッション状態はまだまだ続いた。数回「あなたが欲しい」をやったり「君の瞳を見つめて」をやったり、「あなたの側で」もやったはずだ。明らかにアックスの時より調子が良さそうだったのがほほえましかった。

 そうしているうちに時間は深夜3時を過ぎていた。

 今度はサミー前田さんによるDJタイム。これがすさまじいというか、不思議な曲がばかりが飛び出すDJだった。GS~ニューロックが中心。中でも羅生門の「日本国憲法」、日本屈指の謎盤「薔薇門」を初めて知ったのは、この日、この場所でだった。するとクニさんがサミーさんのレコードに興味を示し、「いやあ、こんなレコード、よく持ってるねえ」。驚きと感心の入り混じった表情を浮かべていた。

 セッション終了後、思い切ってクニさんに声をかけた。これが、クニさんと生まれて初めて話す瞬間だった。「帯広から来たんです」と私が話すと、クニさんは「え?」と驚きの表情。「じゃあこんどは北海道できっと会えるね」。クニさんは笑顔で話してくれた。良い夜だった。

 フジ2日目も、テント内の暑さで目が覚めた。

 夜はシュラフをまくらにして、何もかけずに眠るのが寒冷地仕様の純粋道産子にはちょうどいい。

 なんて思ってテントを出たら、となりのテントのEさんが、テントの外で寝ている。気持ちよさそうだ。というより、苦戦を強いられて命からがら帰宅して、そのまま外で寝てしまったという不本意。軽度の野戦病院みたいな状態だ。

 Eさんの目を覚まさせないように、そっと携帯ガスバーナーでお湯をわかし、カップ入りシチューを作り、有楽町駅前のコンビニで買った食パン(6枚入り)を食う。うまい。目の前には、緑のグラデーションが広がる山々。太陽光線が本気を出し始めるちょっと前。ウグイスはホーホケキョと鳴き、名前の知らない虫たちが、その存在を証明するかのような心地よいノイズを奏でる。

 山の朝はいいなぁ。

 なんて思ってたら、Eさんが起床。昔のパソコンみたいに、起動時間にものすごく時間がかかるみたい。断片化されたデータをひとつの場所に集めて、なんとか「今日の俺」をローディングしてる感じ。

 「けさ、最後までオールナイトフジを見てたんですよ」とEさん。彼は東京出身。私と同じ1981年生まれ。なんとなく自己紹介して、「今日の俺」がだいぶでき上がったところで、パンを差し出す。なんも焼いてないし、味付けしてない、ただ単なる、純然たる食パン。でもこれがうまいんだなぁ。Eさんも「うわ!食パン」と驚きながらも「うまい」。

 午前9時過ぎ。ザックに取り付けたモンベルの温度計によると、テント内では45度を差していた。とにかく日陰を・・・と、スキー場の斜面そのまんまのキャンプサイトを見渡すと、苗場プリンスに向かって左手、トイレ/給水エリア付近に、日陰がある。

 向かってみると、何人かが涼んでる。気になったのが色白のドイツ人風男子2人。彼らはなぜか、新聞(それもドイツ語っぽい)を読んでくつろいでる。肌の色の白さといい、新聞といい、男子2人といい、なんかこう、いろいろ考えさせられる2人。そんな彼らとともに、木陰で涼む。

 木陰はえらい。木はえらい。クーラーがなくても、日差しが防げるだけこんなにも涼しい!そんなことに気づいたとき、少し野生化している自分に気づいた。札幌を出て3日目。まったく風呂にも入っていなかったし。

 香水でキタナイモノをごまかして、コーヒーを淹れたら午前10時。

 さ、2日目の会場に行こう!

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■7月28日(土曜)
・SPECIAL OTHERS(グリーンステージ=序盤の2曲ほど)
・SEUN KUTI & EGYPT 80(グリーンステージ怒涛の2時間!)
・MONO with The Holy Ground Orchestra(ホワイトステージ)
・ONDA VAGA(オレンジコート=気になったので1曲ほど)
・麗蘭(フィールド・オブ・ヘブン)
・ROVO(ホワイトステージ)
・ELVIN BISHOP(フィールド・オブ・ヘブン)
・STEVE KIMOCK(フィールド・オブ・ヘブン=スタート~2曲ほど)

SPECIAL OTHERS

 積極的に見たいものがあるわけではないけど、フジという環境は、もしかしたら良いライブハウスみたいなものなのかと、この雑文を書いている2012年8月10日、ライジングサンに向かう直前に思い出している。2009年のRSR。この初日に見たのがSPECIAL OTHERSだった。「悪くないな」と思った程度だったが、緑が驚くほど多いフジの会場。しかもグリーステージの広大な環境だと、印象がぜんぜん違う。かぜのようなギターの音。軽やかなリフ。ちょっとグレイトフル・デッドっぽい感じ。

気持ちいい!

 ほらほら、2日目からテンションがあがる。でもま、スペアザは本題じゃない。とりあえず2曲くらい聴いてホワイトステージ方面に向かうと、アーティストグッズの販売コーナーがスッカスカ。ここでぶっ飛んだ。財政構造が破綻した。RadioheadのTシャツ3枚、6月のMDTで買いそびれたROVO、昨日のステージで大感動したブルーハーブ、さらにSEUN KUTIのものなど、合計2万円以上を大人買い。クレジットカードが使えたのが、大変ありがたかった。

 爆笑したのがSEUN KUTIのTシャツ購入システム。なぜか売り場係員が「好きなサイズを選んでください」というもんだから、てっきりS~Lで選ぶのかと思いきや、係員はおもむろにダンボールを差し出し「この中から好きなのを選んでください」。

 どひゃー。こんなTシャツの売り方、初めて見たぞ(笑)。箱の中からだいたい自分のサイズに合いそうなのを選ぶ。ちょっと楽しかった。アバウトといえばアバウト。でもここは、おおらかとしたい。アフリカのおおらかさ。たぶん、S~Lと各サイズあるんだろうけど、日本に輸送するまでにぐだぐだになって、いっしょくたになった・・・みたいな。

SEUN KUTI & EGYPT 80

 フジ2日目。この日の、自分にとってのメインアクトはSEUN KUTI & EGYPT 80。キーボード、ホーンセクション(トランペット、テナー、バリトン)、ドラム、パーカッションX2、ベース、ギターX2、女声コーラス&ダンスX2、そしてセウン・クティ(ボーカル、アルト)という、相変わらずの超大所帯。そして彼彼女らがこしらえる猛烈なグルーブ感の「鮮度」は、3年前とぜんぜん変わってなかった。

 その3年前の2009年。私がフジ初参戦時に、彼らの名前を見て「これはもしかして」と気になったバンド。ところ天国でオフィシャルガイドを買い、彼らのページを開くと「フェラ・クティの実子(男)で・・・」とある。何の前知識も無く、ただ名前だけがピンときた。それがSEUNとの最初の出会いだった。

 「どんなものだろう」。2012年と同じグリーンステージで、彼らの「初フジロック」のパフォーマンスが始まった。すさまじいアフリカンビートのポリリズムと、ある種の刺激臭すら放ってるんじゃないかと思うほど「激甘」なフトコロ広いメロディが、縦横無尽に鳴りまくった。心底驚いた。

 「こんなに楽しいビートって、あるんだ!」と。

 その3年前は、グリーンステージ+オレンジコートの2ステージだったが、今年はグリーンステージのみの2時間1本勝負!これで興奮しないわけがない。

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 シンプルなリズムどうしがシンプルに重なり合うだけなのに、なんでこんなに熱いビートになるんだろう!ブルースの原型のような“原始力ブルージー”を宿したギターは今年も絶好調。コリコリとした軟骨みたいな、独特のコクを含みながら、執拗に、これでもか、これでもかと、ひたすらリフを刻む。そのリフとリフの間を、乾いた黒いでっかいビートが、大型動物のような存在感を際立たせながら、のっしのっしと大地を突き進む。そしてSEUNの情熱的なサックスが、空を裂くように鳴り響く。熱い。カッコイイ!その熱さをホーンセクション陣がさらに過熱し、キュートなコーラスとダンスが彩りを添える。

 それは狂気的というか、もう狂喜的な音の饗宴だ。聴き続けると、快/不快を判断する五感の整理系が、だんだんバカになっていく。昔付き合っていた女のことを、頼んでもいないのに思い出させたりする。こんな音楽体験、いままでほとんど無かった。だんだん頭がおかしくなってた。ただ単に「楽しい!」と、快だけを判断するスイッチだけが入りっぱなしの状態。

 まさに「歓喜のグルーブ」。ベートーヴェンの「交響曲第9番」と同じベクトルがアフリカにもあって、その要素がヨーロッパ世界とはぜんぜん違う進み方をしたら、SEUN KUTIに通じるんじゃないか。などと、もう頭の中がワケワカラナサスギ状態だった。

 そのSEUN。ライブ中「俺たちがやっているのはアフロジャズなんかじゃない。アフリカの音楽だ!」と言っていた。その通りだ。アメリカ本土でアフリカを想像するような、妄想のジャズなんかじゃない。彼らはもっと赤道に近い音を、タフに聴かせる。それはすごくフィジカルで、ステージが進むにつれフイジカルさが増していく。気づけば、感情だの脳みそだのとうクソみたいな自意識のディフェンスをボコスカぶん殴ってきれいさっぱり壊されている。ヘヴィパンチを食らわすボクシングのようなパフォーマンス。ただただ、ただただ、グリーンステージのモッシュピット最前列で、ワーキャー歓喜しながら、猛烈なアフログルーブの饗宴を聴きまくってた。阿波踊りだった。踊る阿呆だった。私は。

 歓喜のグルーブ。強烈なビート。腰と脳に来る“原始力”。

 くぅぅぅうううう!たまんねぇ!電化マイルスを聴くときと同じ「くーたまらん!」が、怒涛のように押し寄せる。

 肌の色が白かろうが黒かろうが黄色かろうが、なんかこう、人間たれば当然に感受するはずの普遍的なグルーブ、ダンスミュージックの鋳型。心理学者ユング言うところの集合的無意識のツボを、執拗なくらい押しまくる。最高なバンド。1曲10分くらいありそうな長尺セッションあり、2011年のアルバム「From Africa with Fury: Rise」からの曲もあり、2012年11月の日本ツアーの告知もあり。あっという間に2時間のステージが過ぎ去っていった。

 アンコールでは、リズムをバッキバキに刻む高速アフロビート。それは大型動物が猛スピードで疾走するような、強烈なアフロビートだった。楽しかった。最高に楽しかった。Thankyou!SEUN!またフジで会いたい!

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MONO with The Holy Ground Orchestra

 SEUN KUTI後は、大ボスと闘い、限りなく残りHPがゼロに近い状態だった。体がきしみはじめていた。とにかくホワイトステージ目指して歩いてた。

 グリーンステージ~ホワイトステージ間には緑の森。杉や白樺などの樹木がもりもり。それぞれの葉っぱは、緑と青の間で、乱反射しまくりながら天然のグラデーションを見せる。夏がビカビカ発光している。葉っぱたちが発光すればするほど、木の下に大きな影ができる。昼間の木々たちは、やさしい。そんな木と木の間から、電気的に増幅された、大きな、ひたすら大きなギュォォォォォオオオオオオオオという反復的な持続音が聴こえてきた。

 その音は、なんか聴いたことがある!

 あ!monoだ!

 叙情的ってどんな感じだよ。叙情的を説明しろといわれたら難しい。とにかくこう、別れたくない人と別れる気持ち。愛別離苦。哀切という感情を音で表現すると、こうなるんじゃねぇか。という音を、monoはバンド+オーケストラの編成で表現している。と言えばいいのだろうか。

 私の拙い言語能力では、あの「大きな音」を、うまく表現できない。宇宙的といえば簡単だけど、もっとこう、産みの苦しみを乗り越えるような、飛行機が離着陸するときの衝撃のような、宇宙船が大気圏を突入するときの摩擦力のような音。少し怖いけど、なんか温かい音。苗場という非常に解放的な環境の中で、天に向かって大放射するようなシューゲイジングの快音。

 どんなに言葉を重ねても、中心に行き当たらない広大な銀河みたいな大交響曲。このステージを見ることができて、本当に良かったな。うれしいなと思った。

 気がつけばスルスルと最前列のほうへ進み、前から2列目で、バンド+小編成オーケストラによるmonoの音を聴いていた。最後の一音が苗場の山に消えかかったとき、会場から大きな拍手が沸き起こった。

 次はオレンジコートへ向かい、今年やたら売り出している感のある「ONDA VAGA」を見に、オレンジコートへ。

 なるほど、現代の若者によるフォルクローレ/南米ポップスって感じですか。悪くは無いけど、うーん。自分には前日のLOS LONLY BOYSのギガバイト級のブルースロック的衝撃があったせいで、あまり感動はなかった。

 ・・・と、となりの会場から、なんか良い音が聴こえてくる。

 なんだろ。となりの会場、フィールド・オブ・ヘブン(FOH)へ。

愛情いっぱいのブルースロックを!/麗蘭

 仲井戸麗市の「麗蘭」は、ブルース/ブルースロック/R&Bへの愛情いっぱいのステージだった。「すげー気持ちいいぜぇ」と、適正な日本人ロッカーのノリでフィールドオブへブンの会場を沸かせる仲井戸麗市。彼が奏でるブルースロックは、絶品だった。アニマルズ「ブーン・ブーン」の日本語カバーが飛び出したときは、うれしかったなぁ。

 麗蘭の後に、同じ会場に出演するエルビン・ビショップに、仲井戸麗市は最大級のリスペクトを送り続けた。あこがれのブルースマン(エルビン・ビショップ)のオープニングアクトを務めることができて、うれしくてたまらない!(いや、オープニングアクトじゃないんだけどね)そんなワクワク感が、大人の事情抜きの音楽への愛情が、あのとき、あのフィールドオブへブンには満ちていたんじゃなかしら。

 観客も自然とレスポンスを送る。自然に、ブルースロックで演奏者と観客が溶け合うステージ。

 「毎月ここで(フィールドオブへブンで)ライブやりたいぜ!」と、ギターを手に叫んだ仲井戸麗市。オリジナルのアメリカンテイスト溢れる良曲「ガラガラヘビ」なんかも披露し、初めて見た麗蘭にそのまま痺れた。この直後にROVOがホワイトステージで演奏するスケジュールだった。「ROVO見ようか、麗蘭見続けようか」。激しく悩んだ。ROVOの日比谷MDT(2012年6月17日)を脳内で再生しながら、進行し続ける麗蘭のステージを比べていた。カツ丼にするかカツカレーにするか。そんなレベルの悩みじゃない。二度とこない一瞬のステージの、どちらに賭けるか。大げさだけど、人生の投資だ。それくらい悩んだ。でも悩み続ければ、MDTも麗蘭もかすんでいく。

 「これじゃいかん!」

 大見得を切って、麗蘭のステージを最後まで見ることにした。そして、何度となくエルビンへの敬愛を込めていた仲井戸麗市の言葉を信じて、エルビン・ビショップのステージを見ることも決断した。正解だった。もし麗蘭が出ていなかったら、エルビンへの期待も、あれほどではなかっただろうなぁ。なんて勘ぐりたくなるほどの正しさを、仲井戸麗市は教えてくれた。ような気がする。

大地から天空へあるいはD.D.E/ROVO

 麗蘭のステージが終わったら、ただちにホワイトステージへ。ジプシーアヴァロンのアップダウンがもどかしい。アヴァロンの坂を下ると、ホワイトステージの様子が手に取るように分かる。やっぱりすごい人。下りながら「Compass」のスパニッシュ系の情緒あふれるメロディアスな音に、早くも脳みそがやられ始める。

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 少しずつ前へ進んで、遠くに勝井祐二、その奥に芳垣さんのドラム。かろうじてメンバーが見える位置で、続く「Sino Dub」。山本精一のギターリフが重なるたびに、苗場の緑が、空が、ほこりっぽい地面が、なんでかキラキラ輝き始める感じ。今年のMDTでも大感激したけど、やっぱりROVOのライブは最高だ。同じ曲なのに、見るたびに「やっぱり今日のライブのほうがいいなぁ」と体が反応する。展開はそんなに複雑ではないし、最近のROVOにしては大胆と思えるほど開放的な、牧歌的とも思えるこの曲。でもやっぱり「今日のライブのほうがいいなぁ」。

 そしてラストはやっぱり「D.D.E」。シンセのリフから、メンバー全員で最終決戦に突撃するような大団円。あんまり音楽と社会性を結びつけるのは本望じゃないけれど、いろいろ「生き辛い」21世紀の日本。でもこの曲を2011年、震災からわずか2ヵ月後の日比谷野音MDTで、このタフな楽曲を聴いたとき「あ、俺、いま、生きてるんだ!」と、当たり前の事実に気づかされた。そんなバイタリティに富んだというか、とにかく熱い曲。

 せつなくて感傷的な勝井祐二のエレキ・ヴァイオリンの音色。良い事も悪いことも、ぜんぶひっくるめて猪突猛進していくような、ある意味無慈悲な、それでいて慈悲深いツインドラムのビート。ROVOがつむぎだすグルーヴは、痛快なほどオプティミスティックだ。「D.D.E」中盤の記憶を巻き戻すような、どっか遠くへワープするようなブリッジから先は、やばすぎた。毛穴が開いた。瞳孔開いた。苗場が飛んだ。遠くへ飛んだ。飛ばされた。

ブルースマンは「B級の日本語」を/エルビン・ビショップ

 ボトルネックのスライド主体で、コクのあるブルースロックの大多発地帯。エルビン・ビショップが奏でるギターの音は、ブルースへの扉をゆっくり開けて、気づいたら誰もをブルースの虜にしてしまう。そんな魅力が炸裂する、稀有なステージだった。

 名前だけなんとなく知っていたエルビン。でも彼がポール・バターフィールドとブルースバンドを組み、王道ともいえるアメリカンブルースロックの道に名を残す偉人だということは、少しも知らなかった。そんな肩書きなんかどうでもいい。ただブルースとお姉ちゃんが大好きなギタリストが、そのまま年を取り、2012年のフジロックに駆けつけた・・・。と、エルビンのステージに敷居の高さ、とかくありがちなブルースへのバリアは、全くといっていいほどなかった。

 とにかく楽しい。ギターを弾けば絶品。歌えば渋い。それでいて「ワタシノニホンゴハBキューデス!」「ツリバカニッシ!」。メンバー紹介でベーシストを紹介するときは「ベースソウシャ!」と、日本語を話すのがうれしくてたまらないエルビン。かわいかった。でもでも、どっこいスライドを使ったギターの音色はセクシーで、アメリカの良いにおいがする。ブルースの伝道師みたいなフレーズが、これでもか!これでもか!とテンコモリ。このギャップにも、クラクラっときた。

 トロンボーンと女声ベーシスト(良い音出してました)の存在感も意外と大きかったが、やはりエルビンだ。演奏中に勢いあまってボトルネックが脱落し、ステージ外に落下してスタッフが拾いに駆けつけるという、キュートすぎる場面も。その後、ステージを降りて、まさかの客席の中にギターを持って突っ込んでいくというパフォーマンスあり、観客の中から「これだ!」とエルビンが見つけた女性(かわいい女性)を、エルビンがステージまで引っ張ってて、ギターを弾かせるというギターウルフ並みのアクションも飛び出し、会場はまさかの展開に唖然→大興奮。最高のステージだった。

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 エルビンが終わったとき、時間は午後7時を過ぎていた。フィールド・オブ・ヘブン内のフードコーナーで、チョリソードッグ、フライドポテトなんかを所望して、次はSteve Kimock。序盤はおお、ジェリー・ガルシアが奏でるような、ハッピーなカントリー風味のギターを聴かせてくれる。気持ちいい。けどその気持ちよさが次第に睡魔へと置き換わっていく。

 今日はSEUN KUTI(13時~15時)、MONO with The Holly Gohst Orchestra(15時~16時)、麗蘭(16時~17時)、ROVO(17時~18時前)、エルビン・ビショップ(18時~19時)と、アフロビート、大宇宙サウンド、最強の日本語ブルース、最強のトランスロック、幸せいっぱいアメリカンブルースをスポンジのように浴びまくった。Steve Kimockのステージはこのあと3時間にも及んだらしいが、今日は撤収。ノエル・ギャラガーで客が寄せ集められていることを予測し、キャンプサイトへ。無料のシャワーは案の定、すぐに浴びることができた。

 汗でベタベタした体を、野戦状態のシャワーコーナーで大雑把に清めた。

 すると苗場の夜風が、より一層涼しく感じた。

 想像以上の豪雨に驚いた2009年以来、3年ぶり2度目のフジロックへ北海道から参戦した。今年は自分なりに「ぜんぜん知らねぇけどスゲェ良い!」と、欣喜雀躍、狂喜のバンドがたくさん出て大変におもしろかった。開催期間中の3日間、ほとんど雨が降らないというコンディションにも恵まれ、音と酒に痺れっぱなしだった。

■7月26日(木曜)

新千歳→羽田(飛行機)
東京→越後湯沢(新幹線)
越後湯沢→会場(シャトルバス)
23時50分ごろ会場に到着

 会場に到着して、すかさずリストバンド交換に向かうも、超長蛇の列!真夜中のディズニーランドのアトラクション待ちかよ。6重、7重にぐるぐる行列がトグロを巻く午前0時。

 いちゃつくカップル、音楽プレーヤーでなんか聴いてるやつ、デビルマンのコスプレをしたやつ。みんな思い思いに時間をつぶしてるが、少しずつしか前に進まない。仮死状態の蛇みたいな行列。でもここで諦めちゃいかん。フジロックは待つことから始まるのだ。そう、3年前だって、並んだじゃないか。テントなどが入った重さ13キロの装備をずるずる動かして、やっと交換所が見えた!

 したら・・・

 交換に応じる係員が、2人しかおらん!

 なんだこれ!

 なんでだ!

 「これ、おかしくないですか?」

 言い寄る入場客もいたが、これじゃ入場客をほとんどさばけないも同然。けっきょく1時間30分並んでようやっと、キャンプサイトと3日間の通し券をリストバンドに交換。その後、真夜中のテント張りに四苦八苦。午前3時ごろに就寝・・・。はぁ。

■7月27日(金曜)

・MIMI MAURA feat. 石川道久セッション(オレンジコート)
・DJANGO DJANGO(ホワイトステージ)
・THIRD COAST KINGS(ホワイトステージ)
・THA BLUE HERB(ホワイトステージ)
・ERNEST RANGLIN(フィールド・オブ・ヘブン=中盤を少し)
・MORITZ VON OSWALD TRIO(オレンジコート=昼寝)
・LOS LONELY BOYS(フィールド・オブ・ヘブン)
・HIROMI(上原ひろみ) THE TRIO PROJECT(オレンジコート)
・TOOTS AND THE MAYTALS(フィールド・オブ・ヘブン=通りすがって聴いた?)
・ホウリベ ルウ(ジプシー・アヴァロン=中盤から)
・オールナイトフジ(オレンジコート)
 :DJ AKi & YUUKi MC
 :DEXPISTOLS
 :DJ EMMA

 そんな前夜の苦闘を忘れたかのように、苗場の初日は、早朝から良い天気。午前6時、7時・・・時間がたつにつれ、テント内の温度が上がっていく。だんだん蒸し暑くなってくる。こりゃ、目覚ましがなくても午前7時ごろに、間違いなくおきれるぞ。
 コーヒーを淹れ、水を汲み、午前10時すぎに会場へ。

 入り口の雰囲気など、3年前とほとんど変わってない。相変わらずの荷物チェック&リストバンド確認もあるし。
 難なく会場に入れた。入って左手に何かの組織のテント、もう少し進むとトイレ。だんだん3年前の勘がよみがえってくる。3年前におぼえた会場図の記憶。頭の奥深くで冷凍されてカチンカチンになってるやつが、少しずつ解凍されていくような気分。「やっぱグリーンステージはでかいなぁ」「やっぱりグリーン奥にアーティストグッズ販売があるのか」といった具合に。

 と、初日は「ものすごく見たい」という出演者がそれほど多くなかったが、最初のMIMI MAURA feat. 石川道久セッションから、「やっぱフジはいいなぁ」と思いたくなるような、見ず知らずの音楽との良い出会いがあった。

最初の風は、南国の風/MIMI MAURA feat. 石川道久セッション

 なんだこの風通しの良い音は!と、最初にこのバンドの音を聴いた瞬間、すんごく感動した。網タイツの熟女ボーカル(足が太い)が、ちょっと馬力のある南米っぽい歌声を張り上げる。気の強そうな、芯の太そうな南国のメロディ。エレキヴァイオリンが浮遊感をかもし、ギターのカッティングが暑い国に吹く、心地よいそよ風みたいな、美メロを奏でる。

 ブラジルでもないジャマイカでもない。ボサノヴァでもないレゲエでもない。なんだろう。この感じは。カリビアンなんだけど、スチールドラムがあるわけでもない。そうか、スチールドラムなしでも、カリビアンな感じってかもし出せるのか!

 などと一人合点し、ワクワクモードへのギアがしっかり入った気にさせられた。

 3人編成のDJANGO DJANGOは、1つのドラムセットを2人で叩くというパフォーマンスがあり、その出鼻でスネア(だったと思う)が勢いあまって倒れるというアクシデント。なんだかキュートだった。

 THIRD COAST KINGSはまったく知らないバンドだったけど、ジェームス・ブラウンのバンドがそのままフジロックにやってきたような、極上のファンクチューンを連発。横山剣みたいな暑苦しいボーカル(これが絶品)の左側にギター&ベース、右手にホーンセクションという布陣。

 メカニカル極まりないリフを積み重ねるギターに唖然としたり、ゴージャスなホーンセクションにうっとりしたり。かと思えば、JBを崇拝しまくってそうな熱い(暑苦しい)ボーカルもたまんねぇ。ベースも良い味出してた。アーシーなグルーヴ感。これは西海岸な感じだろうか。

 自分なりに、フジロックへのボルテージが上がったパフォーマンスだった。

THA BLUE HERBあるいはホワイトステージの歓喜

 そしてTHA BLUE HERB。この日のベストアクトは、間違いなく彼らだったと断言したい。ILL-BOSSTINO、DJ DYEの2人だけのステージ上は、怖いくらい「スカスカ」だった。客がスカスカだったわけではない。ステージ上がスカスカだったのだ。

 CD-Jっぽいセットなどを千手観音みたいに操作しまくるDJ DYEと、マイクを手にするILL-BOSSTINOの2人。にもかかわらず、メロウでタフなビートに乗せて、ILL-BOSSTINOは時と場合を取捨選別しながら、絶妙なライムをつむぎまくった。

 3・11以前/以後の現状、日本の政治家たちへ浴びせる痛烈なメッセージ、学校じゃ教えてくれない勇気の使い方。先手必勝、タッチアンドゴー。ピアノのメロディの破片に合わせて、絶妙な言葉と言葉を浴びせまくる。言葉を吐くたびに、会場が熱くなって行く。BLUE HERBのよさは、短期的な快楽におぼれたり、弱いものをいじめるような、くだらねぇヒップホップとは太陽と冥王星くらい離れている点だ。とにかく前向き。クソ寒い北海道の冬を、なんとかして乗り越えてきた男の歌だ。彼らが「乗り越えてきた」方法を、わかりやすく教えてくれる。そんなステージだったように思う。

 ホワイトステージ上部の大画面ビジョンに映るILL-BOSSTINOのキャップには、北海道の地形の刺繍。札幌からのし上がった男が、今、こうして、ホワイトステージで熱いパフォーマンスを見せている。そして会場が沸いている。その「現場」で私は、北海道で生まれ育ち、今も暮らす私は、号泣した。最高だった。

フィールド・オブ・ヘブンの魔力/LOS LONELY BOYS

 THA BLUE HERBがベストアクトなら、最大の収穫はLOS LONELY BOYSだった。見てくれはマッチョになったレニー・クラヴィッツ風。でも奏でる音はサンタナとジミヘンの良いところをつなぎ合わせたような、ミラクル絶品のバカテクサウンドのギターが、花火大会のように大炸裂。牛丼屋で並盛を頼んだら、ギガ盛の牛丼が出てきた。みたいな、手数が多いけど耳においしいエレクトリック・ブルースのフレーズテンコモリ!最前列でワーキャー言いながら、声援を送りまくった。
 彼らはアメリカのバンドだそうだが、歌はスペイン語(ポルトガル語?)っぽい。いや、もしかしたらスパニッシュなまりの英語なのかもしれない。そんな絶品ギターに、メタルっぽい雰囲気でゴリゴリなリズムをつむいだドラム&ベースが、おいしく溶け合う。3ピースなのに、パンチと破壊力のある純然たるロックを奏でてた。カッコよかったなぁ。

 最前列でまったく知らない人とワーキャー言いながら聴いてたら、終演後、そのまったく知らない人が感極まって「この会場の砂を持って帰りたい!」と興奮気味に語ってた。その気持ち、すんごいよくわかる。だって私もぶっ飛びまくる電気式ブルースにしびれたから。

 そんなイカしたボーイズに痺れたこともあってか、オレンジコートの上原ひろみ。正直に言うと物足りなかった。たしかにパフォーマンスは真剣だったし、しゃべったらカワイかった。けど、先日の山下洋輔のピアノに痺れまくったジャズ聴覚には「もっとめちゃくちゃに弾いて、俺をめちゃくちゃにしてくれ!」という、欲求不満状態だった。

 単調なと言えばそれまでだけど、若干ワンパターン気味のリフが多く、もっとこう、ドシャ!メシャ!グシャ!と盛大にクラッシュして、そこから何事もなかったかのようにリスタートする。そんな強引さと根性があったら、きっともっと、スゲェ音楽をつむげるだろうになぁ。なんて思いながら観ていた。

ドラムンベースの貴公子/DJ AKi & YUUKi MC

 この日のラストはオールナイトフジ。3年前に参加したときは、まさかの豪雨で中止となったため、今回が初参加。そんな会場のオレンジコートのステージには、2台のDJブースが。その前面に電飾付のリングを模したロープが張られている。なるほど、DJ同士の対決ってわけか。

 そのラウンド1。スタートを飾ったのが、日本が誇るドラムンベースの貴公子、DJ Aki。彼がむかし、Nikeのランニング向けDJミックスを配信したとき、何年ぶりかにドラムンベースの魅力を再発見したものだが、相変わらず情け容赦ない高速ビートに、キラキラ光るようなメロディーを組み合わせたような、そんな両極端が一体化したダンスミュージックがいっぱい。高速ビートに合わせ、最前列で踊りまくる。DJ Akiも踊りまくりながら、曲をつなぐ。踊るたびに、彼のドレッドヘアがブンブン揺れるのがおもしろかった。DJ Akiのプレイに合わせてMCが吐く言葉も、決して饒舌な感じではないが、ひたむきな感じで好感が持てた。

 プロディジーの名曲「VooDoo Peole」がドラムンベースかされたmix(ペンデュラムか)も流れ、ワーキャー言いながら踊りまくったら、あっけなくDEXPISTOLSにバトンタッチ。もう少し聴きたかった。

 DEXPISTOLSもプロディージーの「Smack My Bitch Up」を流した。プロディジーで中学時代を過ごした俺には懐かしすぎたが、やっぱりドラムンベース需要は少ないのか。会場はDEXPISTOLSのほうが盛り上がった感じだった。でも俺はDEXPISTOLSよりも、Dj Akiのほうがカッコイイと思った。いや、そんなことどうでもいいや。

 続くDJ EMMAあたりから、あんまりグッとこないハウスっぽいビートが増えてきて、正直飽きてきた。ほんとはDJ KRUSHのパフォーマンスを見たかったけど、途中で諦めてテントへ。オレンジコートからキャンプサイトまで、約40分かかった。

 ここで頭の地図が完全に像を結んだ。そして思った。

 フジの会場は、やっぱりデカイ。そして広い。

 と。

 2009年以来、3年ぶり2度目のフジロックへ北海道から参戦した。

 まずは自分のメモ用に、観たバンド/パフォーマーたちを。

■7月26日
新千歳→羽田(飛行機)
東京→越後湯沢(新幹線)
越後湯沢→会場(シャトルバス)
23時50分ごろ、会場に到着

■7月27日(金曜)
・MIMI MAURA feat. 石川道久セッション(オレンジコート)
・DJANGO DJANGO(ホワイトステージ)
・THIRD COAST KINGS(ホワイトステージ)
・THA BLUE HERB(ホワイトステージ)
・ERNEST RANGLIN(フィールド・オブ・ヘブン=中盤を少し)
・MORITZ VON OSWALD TRIO(オレンジコート=昼寝)
・LOS LONELY BOYS(フィールド・オブ・ヘブン)
・HIROMI(上原ひろみ) THE TRIO PROJECT(オレンジコート)
・TOOTS AND THE MAYTALS(フィールド・オブ・ヘブン=通りすがって聴いた?)
・ホウリベ ルウ(ジプシー・アヴァロン=中盤から)
・オールナイトフジ(オレンジコート)
 :DJ AKi & YUUKi MC
 :DEXPISTOLS
 :DJ EMMA

■7月28日(土曜)
・SPECIAL OTHERS(グリーンステージ=序盤の2曲ほど)
・SEUN KUTI & EGYPT 80(グリーンステージ怒涛の2時間!)
・MONO with The Holy Ground Orchestra(ホワイトステージ)
・ONDA VAGA(オレンジコート=気になったので1曲ほど)
・麗蘭(フィールド・オブ・ヘブン)
・ROVO(ホワイトステージ)
・ELVIN BISHOP(フィールド・オブ・ヘブン)
・STEVE KIMOCK(フィールド・オブ・ヘブン=スタート~2曲ほど)

■7月29日(日曜)
・ゴジラ・放射能・ヒカシュー(最狂のオレンジコート)
・奇妙礼太郎トラベルスイング楽団(フィールド・オブ・ヘブン)
・ORQUESTA LIBRE with おおはた雄一(オレンジコート)
・シアターブルック/A 100% SOLARS(フィールド・オブ・ヘブン)
 :Salyu
 :うつみようこ
 :後藤正文
・井上陽水(グリーンステージ)
・ELVIS COSTELLO AND THE IMPOSTERS(グリーンステージ)
・Radiohead(グリーンステージ)

・・・それぞれの詳細は、明日以降にでも。

 2012年7月6日(金曜日)。サントリーホール(東京)で行われた「山下洋輔(Pf) スペシャル・ビッグバンド・コンサート2012」に行ってきた。

 大感動、大興奮の嵐だった。

■山下洋輔スペシャル・ビッグバンド (Yosuke Yamashita Special Big Band)
山下洋輔 Yosuke Yamashita (piano)
金子 健 Ken Kaneko (bass)
高橋信之介 Shinnosuke Takahashi (drums)

[Trumpet Section]
エリック 宮城 Eric Miyashiro (tp)
佐々木 史郎 Shiro Sasaki (tp)
木幡 光邦 Mitsukuni Kohata (tp)
高瀬 龍一 Ryuichi Takase (tp)

[Trombone Section]
松本 治 Osamu Matsumoto (tb)
中川 英二郎 Eijiro Nakagawa (tb)
片岡 雄三 Yuzo Kataoka (tb)
山城 純子 Junko Yamashiro (B.tb)

[Saxophone Section]
澤田 一範 Kazunori Sawada (as)
米田 裕也 Yuya Yoneda (as)
川嶋 哲郎 Tetsuro Kawashima (ts)
竹野 昌邦 Masakuni Takeno (ts)
小池 修 Osamu Koike (bs)
※[池田 篤さん]が病気療養のため[澤田一範さん]に変更となりました。

 ・・・と、こんなメチャクチャな布陣で、クラシック曲の「ボレロ 」(M.ラベル / Big Band Version)、同じく「組曲 展覧会の絵」(M. ムソルグスキー / Big Band Version)、デューク・エリントンのナンバーなど、想像通りメッチャクチャな演奏をドバーっと聴かせてくれた。

■進化の果てはメカゴジラな「ボレロ」

 「ボレロ」は森の奥深くにいそうな可憐な生き物が、怪人ジャズマンどもの音楽と音響で改造されてまくって、最後はメカゴジラみたいに音楽によるカタストロフィをもたらすような、ありえない進化を頼んでもいないのに聴かせる。そんなプレーだった。

 これだけでおなかイッパイなのに、休憩をはさみ、次は「展覧会の絵」。あの冒頭のメロディーがテーマとなって、フリージャズ丸出しのきわめてモーダルなアレンジあり、ドシャメシャ・ジャズあり、豪雨のようなスイングジャズと、「ヨースケさんならそう来るよねぇ」と、痺れっぱなしの驚異的なプレーてんこもり。一歩間違えれば拷問。でもぜんぜん楽しい!1曲(1枚の絵)ごとに拍手が沸いたのも、ほほえましかった。

■「クレイ」にやられた!

 NHK交響楽団の主席オーボエ奏者、茂木大輔とヨースケさんとの「タイマン」勝負で披露した名曲「クレイ」もすごかった。鮮やかな筆さばきで驚異的な水墨画をシュシュっと描いて、見る者のハートをぐわっと鷲掴みするような、そんなミラクル演奏家どうしの一本勝負みたいな演奏。

 ヨースケさんの背中がはっきりと見える席だったこともあり、彼のシャア専用ザクのようにすばやく、するどいプレイスタイルを拝める瞬間でもあった。ああ、たまりまへん。鍵盤の真ん中あたり→高音部→ドシャっとつぶれるような低音。きらきら光るモザイクタイルをこしらえたかと思いきや、不意を突く大きな衝撃とともにタイルが一気に飛び散り、泥沼の中に消えていくような急転直下、ジェットコースターのようなプレイスタイル。そんなヨースケさんのスタイルは、もう国宝級と言ってもいいのでは。

■高橋信之介という凄腕

 まるでジェフ・ベックのように「次にどういう音が来るか」と、音の予想ができない/させない、ヨースケさんのドシャメシャ・ピアノに喧嘩を挑みつつ、時に引き立てつつ、さりげなく「自分の味」も交えて聴かせたのが、30代のドラマー・高橋信之介だった。

 大ホール会場なのに、ドラムセットの音量を叩き方で的確にコントロールし、さらにヨースケさんのドシャメシャ・サウンドに食って掛かるような、鮮度の鋭いシンバルワークを見せ付けたのには恐れ入りました。ものすごいスピードでドラムを叩いているのに、無駄がない。過剰じゃない。けど、恐ろしいくらい手数が多い。

 陳腐な言い方だけど、何かを表現するための想像力と、それを具現化するための技術。その両者が、良いエンジンと良い駆動系(ギア)みたいな関係で、奇跡的なバランスを保ちながら、ドラムを叩くまくっていた。そんなスーパーカーみたいなビートに乗って、ヨースケさんは、あまりにも自由なフレーズを引き出しまくる。

 強力なF1チームみたいな演奏だった・・・。

 2012年7月21日、札幌OYOYOで、1970年代の旧西ドイツのロックバンドCANの元メンバー、ダモ鈴木を迎えたライブがあった。

 今回は、旭川と札幌の2デイズのツアーでの道内ライブ。WATCHMANという日本人ドラマーとライブを繰り広げたが、なかなか、いやかなり刺激的なライブだった。

 ドラム、ダモさん、ギターの3人で「なんだかわかんないけど、なんかおもしろそうな」予感ぷんぷんのセッションが繰り広げられた。こういうセッションは別に珍しくもないんだけど、そこに独特の美意識を放つ西ドイツのロック=ジャーマンロックのエッセンスが加わると、音が恐ろしいほど豊かになる。

■ジャーマンロックの美学!

 スネアよりもタムでリズムを刻み、シンバルは空気を切り裂いたり、振動させたりするような「道具」に成り果てる。そしてギターはリバーブを駆使しまくって、達筆の書道のかすれ具合が、見えない山にこだましていくような、ありえない「山の音」を聴かせる。そうそう、これこれ!これだよ!と、ジャーマンロックという名物料理を味わうような気持ちで、わたし、ニコニコ。

 そしてダモさんは、なんだかポエトリーリーディングみたいな、何言ってるんだかわかんないだけど、がなったりわめいたり、つぶやいたり、周囲の楽器を注視してるんだか無視してるんだかわかんないような間合いで、パフォーマンスを進めていく。

■暑苦しい、そして熱いフロア

 そのダモさんのマイペースを引き立てつつ、時に引き離しつつ、ジャズの即興よりも即興すぎるようなセッションが続いた。ライブ中盤には地元札幌のバンドのメンバーも加わり、ドラム、パーカッション、ギターX2、ベース、ダモさんという大編成で大セッションに。

 エレキベースが加わると、リズムと次のリズムを連結するような一体感が生まれ、さらにパーカッションとドラムがポリリズムをつむぎだすと、フロアが熱くなった。クーラーがない暑苦しい札幌OYOYOのフロアが、余計暑くなった。

 と、久しぶりに予定調和をまるで無視したような、楽しい音楽と出会えた夜だった。レコーディングされた音をライブでやるなんて、つまんねぇじゃん。だったらレコード(CD)を聴け。と、こんなことをマイルス・デイヴィスは言ったもんだが、そう。ライブって「何が起こるかわかんねぇ」スリリングさに富んでいてほしいと願う。

 そのスリリングを表現できるダモさんて、やっぱタダモンじゃねぇな。

 帰り道、汗でべたべたになったTシャツのまま、コンビニでカツカレーを買ったら時計は午前2時に近づこうとしていた。

 2012年6月30日(土曜)は、ヒルトン・ニセコヴィレッジ(ニセコ町)で開かれた「森のカフェフェス」に行った。

 野外コンサート主体の「夏フェス」なんですが、会場内に出店しているお店が、そのイベント名のとおり「カフェ」が多数。ドリップでコーヒーを淹れたり、エスプレッソマシーンでカフェラテを作ったり、ビールよりもコーヒーが飲まれるという、ハイネケンが当たり前のフジロック、サッポロ黒ラベルがおいしいライジングサンなどのロックフェスに慣れている身の上(私)には、非常に、非常に不思議なイベントだった。

 出演アーティスト陣も、オーガニックと言えばいいのか。地下室+アルコールよりも、木漏れ日+コーヒーが合いそうなラインナップ。原田知世、アン・サリー、Chocolat & Akito、コトリンゴ・・・というメンバーで、正午から夕方まで、のんびり/まったりした音を聞かせてくれた。

cafe_fes2012

原田知世はまぶしかった

 会場は、右手に羊蹄山がドーンと広がる、ヒルトンのゴルフ練習コースと思われる草地。好天に恵まれ、午後2時ごろまで、座ってるだけで汗がじわーっと出てくる
感じ。でも、風が吹けばすごく涼しい。

 そんな高原のステージで、原田知世はラストに「時をかける少女」を披露。ギターとボーカルのデュオ編成ながら、ちょっとサウダージな雰囲気のボサノバアレンジで聞かせてくれて、感激した。「過去も未来も 星座も越える・・・」。ユーミンが書いたこの詞自体が良いのに、アレンジが変わるともっと良くなるのか。文字通り、感涙もんだった。背筋をピンと伸ばして、座りながら歌う原田知世。すごく、すごくまぶしかった。

イッツ、キュート!Chocolat & Akito

 続くChocolat & Akito。おそらく5月の帯広ライブで、ばんえい競馬を見て、さらに札幌で観光幌馬車の銀太君にも会えたことを、曲間のMCでうれしそうに話していたのがほほえましかった。しゃべるとドラえもんみたいなのに、歌うとぜんぜん別人。そんなChocolatのギャップと、夫のAkito(グレート3)の2人は、不思議なバランス感を保ちながら、ニセコの森で温かい音をつむいだ。打ち込み入りの曲で出だしをトチったり、パーカッションを叩くタイミングが、かなりぎりぎりに際どかったりするChocolat。彼女をサポートするような、Akitoの心の温かさも見えてくるような、キュートなステージだった。

うれし涙、わらい涙 コトリンゴは良いなぁ

 そしてこのフェス最大の収穫がコトリンゴ。フリッパーズギターの「真夜中のマシンガン」、オリジナルの「みっつの涙」などなど、カバーもオリジナルも自在に歌い、時にジャズっぽいフレーズをちらつかせながら歌う雰囲気から「わ!矢野顕子みたい!」と直感。肩の力を抜き、無理に力まずに歌うような、かすれるような歌唱は、大貫妙子をほうふつとさせる。と書くと、ちょっと言いすぎかな。

 芯に熱いものが宿ってそうなコトリンゴのピアノのテクニックと、独特の透き通るハスキーボイス。その性能にはうすうす感づいていたけれど、ドラム+ピアノという極小編成で、ほぼネイキッド状態であっても、わぁ。グッと聴かせてくれる。2011年のワールドハピネスで彼女のパフォーマンスを初めて見たときも「いいなぁ」と思ったけど、そのときよりも少しスリリングで、なのに解放的な雰囲気で、超ステキだった。

おいしいコーヒー、ベーグル

 と、こんな具合に出演陣もナカナカだったが、フード/ドリンクの出店ブースのクオリティも高かった。地元ニセコのカフェ「高野珈琲店」のアイスカフェラテは、これまで飲んだどのカフェラテよりも美味。コーヒーのほどよい苦味と後味、そして存在感のある牛乳のコク。コーヒーと牛乳のシンプルなデュオが、良い味出してた。

 「高野珈琲店」はベーグルも販売していて、ベーグルなんか絶対買って食べない!と食わず嫌いだった私の味覚を、大いに是正してくれるおいしさだった。硬すぎず、やわすぎず。ほどよい弾力の、ほどよい食感。

 こんな具合に、コーヒーとベーグルが似合うフェスは、今回が道内初開催。お客はそんなにバカスカ入っている印象ではなかったですが、ちびっ子からおばあちゃんまで、親子3世代で楽しめる雰囲気の会場は、真剣に音楽を楽しむ/のんびりコーヒーを飲むといった具合に、来場客が自由にフェスを楽しめる感じだった。

 そんな会場の空気と、羊蹄山の良い山を眺めていたら、あっという間に5時間のステージが終わっちゃった。

 再びこんなステキなイベントが、北海道で開かれたらいいなぁと願っている。

 2年ぶりにライジングサン@石狩に行ってきた。
 
 くるり、DJ KRUSH+こだま和文(ともに8月12日)、Okamoto’s、にせんねんもんだい、Y.SUNAHARA(いずれも13日)が見られてよかったけど、腹が立つことも多かった。

 まずは良いことから書こう。

DJ KRUSH+こだま和文
 何よりもDJ KRUSH+こだま和文のジャズ~ヒップホップ~エレクトロニカを行ったり来たりするムーンサーカスの空気。これは自分の中で、今回のRSRの最高のパフォーマンスになった。

 ターンテーブルのスクラッチを音響マシーンとして駆使するKRUSHと、マイルス「死刑台のエレベーター」に吹き込まれたような、美しい流れ星みたいなミュートトランペットのサウンドを放つこだま和文の音楽的交感。でも単に「美しい」とか「キレイ」とかではなく、どことなくいがらっぽい殺気みたいなものが横たわっている。

 「この空気感だよなぁ。音楽を『おもしろい!』と思う瞬間て・・・」

 なんて考えるスキも与えないほど、地に足がしっかりついているけど、浮遊感あふれるパフォーマンスが繰り広げられる。不思議なステージだった。こだま和文のエレキカリンバもよかった。金属音なのに豊穣。その音に、ぶっといキックと軽やかなスネア。そしてKRUSH節ともいえるちょっと絶望的な、でも希望が持てそうな、破壊=再生を予感させるベースラインに乗っかって、エレキカリンバが鳴り響く。気持ちよかったなぁ。

 このKRUSH+こだま和文のダブ処理は、DUB MASTER Xが担当したんだそう。さらにボーカル(ラップ)で入った降神(おりがみ)のお兄さんも、なんかヨカッタ。第3次世界大戦。核戦争。いろんな恐怖やふざけたことはあるけれど、もっと前を、そのまたもっと前を想像して生きよう。なんて具合のポジティブなラップ。ただこう書くと、よくありがちな安トラックのクソヒップホップに堕しそうな思えるけど、さにあらず。そこに色即是空・空即是色なブッディズムに通じる質実剛健なマインドが、エレベーターシャフトのようにしっかりと内蔵されている。すごく説得力のあるラップだった(ちょっと着いていけないなと思う場面もあったけれど、これがKRUSH節にピッタリフィットしたのが不思議)。

くるり
 くるりは、いつかみたいなーと思っていたバンド。俺は「リボルバー」がいちばんすきなんだけど、さすがにライブでこの曲を再現するのは難しいわな。と淡い期待を抱いていたら、1曲目は「ブレーメン」。さらに続いて「ワンダーフォーゲル」。なかなかイイ。トランペット入りの5人編成になったらしいが、このバンドの大事な部分=独特のベースラインと、それに乗っかるギターの、弦楽器のバランスは相変わらず均衡が保たれていて、いいなぁと思った。さらに高田漣もゲストで参加!ここで演奏した「温泉」は、マジで気持ちがよかった。岸田のウンコトークは笑えた。

Okamoto’s
 Okamoto’sはマジクソぶっ飛んでた。全部の曲が好きではないけれど、ドラムがキース・ムーンのように高密度乱打し、ベースが手弾きで硬くて速くて重くて低いメロディーを奏で、ギターが発狂する。そしてボーカルはマラカスを振っている。最高なバンドだ。このちょうど6日前のWorld Happiness@東京・新木場でも見たんだが、そのときは15分くらいしか持ち時間が無く、消化不良でライブを見たのが正直な実感。でも、この日は違った。リンク・レイとザ・フーのカバーは、新木場よりも尖ってた。特にフーの「Kids are Alright」。ハマ岡本がジョン・エントウィッスルそのもの!と錯覚した瞬間が、何回か訪れた。ギターの風車カッティング、ギターのノイズを揺らしまくるプレイは、めたくそカッコよかった!この張り詰めたROCKIな感じ。ワカイモンだからこそ奏でられる、鋭いビート感。客を突き放すような、疾風怒濤のインタープレイは、発狂もんだった。サンキュー!オカモトズ!彼らのTシャツとバッジとタオルを買えたのは、うれしい思い出だ。

 そんなOkamoto’sを直射日光浴びまくって発狂してみてたら、次のにせんねんもんだいで残りHPは限りなくゼロに近かった。だから生まれて初めて、芝生(というか、荒っぽい茎)の上で寝転びながら、彼女たちの電撃インストディスコを聴く。1曲目はキーボード入り、2曲目はギターの足元で制御するシーケンサーが特徴的な曲。で、驚いたのが3曲目(というか、最後にやった曲)。ギターがシューゲイザー状態で、ビカビカしたノイズをぶちまけまくる!なんだこれ!すごい!ちょうど1週間前の8月7日、恵比寿リキッルームで見たときよりも、荒くれまくってたような気がする。ただ、できれば夜に聴きたかったな。

Y.SUNAHARA
 最後はY.SUNAHARA。「LOVE BEAT」「The Center of Gravity」など、名曲の美メロたちをクールな映像に載せて、砂原氏がぶっ飛ばしまくった!サウンドのミックス、映像のエフェクトをともにKraftwerk「Minimum-Maximum」な状態で、「現場」でそれぞれ加えていく。うわさに聴いていたスナハラマジックを、初めて見ることができて、うれしかった。レイ・ハラカミの「JOY」も飛び出して、なんだかエレクトロニカ全開の1時間。

 ・・・と書いてみて、気がついたのは、Okamoto’s(RED STAR FEILD)、くるり(SUN STAGE)以外は、みんなMOON CIRCUS。

 それも自分が「見たいな」と思っていたバンドにのみ、満足したている結果だ。

 悪くない。たしかに悪くないんだけど、前に行った2009年のRSRは「ぜんぜん知らないけどイイなぁ」と思えるバンドが、いくつかいた。それはパスカルズと、吾妻光良 & The Swinging Boppers。どっちもイイ意味でぶっ飛んでいて「うわー!音楽ってたのしい!」と感動する瞬間が、何度と無く訪れた。そして「RSRに着て良かった!」と感動したもんです。

 翻って今年はどうかというと、予定調和の音ばかりだった。あえて書けば梅津和時 KIKI BANDかなぁ。とは言っても、もそれほど神経にダイレクト注入、脳漿の深いところが刺激されるような音楽的興奮は、それほど訪れなかった。これまでいくつかの録音で音を聴き名前は知っていたけど、本人を拝むのは初めてという鬼怒無月(ギター)の動く姿を見られたのは興味深かったけど、めちゃくちゃ死ぬほど好きというギターの音でもないし「へー、この人かぁ」というくらい。

 なんだか今年のRSRは、パンチ力が例年以上に弱かった気がする。Join Aliveの影響もあるのだろうか、来場客もそれほど多くなかった気がする。ついでに言うと、グリーンオアシスのPAは相変わらずクソだったなぁ。あれは何とかならないのか。旧世代のOSで動いているサウンドシステム-。なんか、そんな聴こえ方だった。

 いや、むしろ逆に、これが普通のRSRなのかもしれないな。

 でも1万8千円(入場料)+2千円(駐車場)のチケットは、あまりにも値段が高すぎるぞ。ウエス!

 ・・・と、RSRの前後は感情がオーバー気味だったな。RSRの前にフリクション(レック+中村達也)、にせんねんもんだい、World Happinessを見たせいか、感情や音響をとらえる聴覚が尖ってたんだろうな。だからその感覚を差っぴけばたってフツーのRSRだったと思う。でも、やっぱりチケットは高すぎだな。